年末ジャンボやロト7など、宝くじの中には1等の当選金が数億円という高額なものもあります。高額の当選金は嬉しいですが、実際に受け取った場合、税金を払わなくてはいけないのでしょうか。
今回の記事では、本当に宝くじの当選金に税金はかかるのか、さまざまなケースを想定して解説します。
宝くじの当選金には税金がかかる?
宝くじで高額当選を果たした場合、受け取れる当選金には税金がかかると思うかもしれません。しかし、実際は7億円や12億円といった高額当選だったとしても、非課税になります。
宝くじ法に税金がかからないと明記されている
じつは、宝くじの当選金には税金がかからないことが「当せん金付証票法(宝くじ法)」という法律で明確に規定されています。
当せん金付証票法 第十三条 当せん金付証票の当せん金品については、所得税を課さない。 |
そのため、宝くじの当選金を受け取ったとしても、所得税・住民税などの税金は発生せず、確定申告をする必要もありません。受け取った宝くじの当選金を自身の生活費に使ったとしても、同様です。
宝くじの当選金が非課税ではなくなるケース
宝くじの当選金は本来非課税のため、高額当選を果たしても税金を払う必要はありません。ただし、当選者の使い方や分配の仕方次第では、財産の分配を受けた側が税金を払う必要が出てきます。この点について、次の2つのケースを用いて解説します。
当選金を誰かにあげる
宝くじの当選金を家族や親族、知り合いなどの「自分以外の誰か」にあげた場合、もらった側が税金を払う必要が出てきます。これは、贈与税の支払い義務が発生するためです。
たとえ、当選金を生活費に使ったとしても、財産を受け取ったという事実があれば税金を払わなくてはいけません。
2,000万円あげた場合
宝くじの当選金2,000万円を誰かにあげた場合、もらった側にどれだけ贈与税がかかるかを見てみましょう。
なお、贈与税には暦年課税と相続時精算課税制度があります。
暦年課税と相続時精算課税制度
暦年課税 | 毎年1月1日から12月31日までの1年間(暦年)で受けた贈与額を元に、贈与税額が計算される。 年間110万円までの基礎控除がある。 |
相続時精算課税制度 | 原則として60歳以上の父母または祖父母などから、18歳以上の子または孫などに対し、財産を贈与した場合において選択できる。 受贈者が2,500万円まで贈与税を納めずに贈与を受けられるが、相続時には贈与された額も含めて相続税を計算する。 |
出典元:国税庁「贈与税の計算と税率(暦年課税)」「相続時精算課税の選択」
暦年課税における贈与税は、以下の速算表を用いて「贈与税 = (贈与額 ー 110万) x 速算表の税率 ー 速算表の控除額」という式で求めます。
暦年課税かつ一般贈与の場合の速算表
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | ー |
200万円超~300万円以下 | 15% | 10万円 |
300万円超~400万円以下 | 20% | 25万円 |
400万円超~600万円以下 | 30% | 65万円 |
600万円超~1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,000万円超~1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
1,500万円超~3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
出典元:国税庁「贈与税の計算と税率(暦年課税)」
仮に、宝くじの当選金として2,000万円を受け取った場合に、受け取った側にかかる贈与税を暦年課税を前提として計算した場合、贈与税「(2,000万円-110万円)×50%ー250万円=695万円」となります。
高額の当選金をもらうと、かかる税金もかなりの額になる点に注意が必要です。
当選金を相続する
宝くじの購入時、当選発表時には存命だった人が当選金を受け取った後亡くなった場合、家族など一定の関係にある人が相続することになります。ただし、亡くなった人の財産が相続税の基礎控除額以下である場合、遺族が相続税を払う必要はありません。
なお、基礎控除額(相続税の計算で用いられる非課税枠)は、宝くじの当選金を含めた相続財産と法定相続人の数によって決まります。「一律3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算可能です。(国税庁「相続税の計算」より)
法定相続人とは、民法で定められた被相続人の財産を相続できる権利がある人を指します。亡くなった人の配偶者に当たる人は常に相続人になりますが、それ以外の人については、被相続人から見た続柄次第で相続人になるかが決まる仕組みです。
相続順位と法定相続人および法定相続分
相続順位 | 法定相続人および法定相続分 |
子どもがいる場合(第一順位) | 配偶者:1/2、子ども:1/2※ |
子どもがおらず父母がいる場合(第二順位) | 配偶者:2/3、父母等:1/3※ |
父母、子どもがおらず兄弟姉妹がいる場合(第三順位) | 配偶者:3/4、兄弟姉妹:1/4※ |
出典元:国税庁「相続人の範囲と法定相続分」
※複数人いる場合は人数で分ける
配偶者と子どもが2人(長男・長女)がいた場合、基礎控除額は4,800万円(=3,000万円+600万円×3人)となります。宝くじの当選金を含めた相続財産の額が4800万円以下だった場合、相続税はかかりません。
また、配偶者は1億6,000万円までなら相続税がかかりません。それでも、亡くなった人が高額当選者で当選金をあまり使わない状態で相続が発生した場合、遺族が相続税を払うことになる可能性は高いでしょう。
宝くじの当せん金を贈与税がかからない形で受け取る方法
宝くじの当選金をあまり考えずに家族や知り合いにあげてしまうと、受け取った側にかかる税金が大きくなってしまいます。ここでは、宝くじの当選金を贈与税がかからない形で受け取る方法として、以下の2つについて解説します。
1年間に渡す金額を抑える
宝くじの当選金を受け取った側に税金がかからない形で渡すには、1年間に渡す金額を贈与税の基礎控除額である110万円以下に抑える方法が考えられます。例えば、1,000万円を渡したい場合「100万円×10年=1,000万円」として渡す、ということです。
ただし、税務署に「1,000万円を10回分割で受け取っている」(定期贈与)と判断されると、贈与税の支払い義務が生じます。定期贈与と判断されないためには、以下のようにすることがポイントと考えられます。
毎年、違う金額を贈与する
毎年、違う時期に贈与する
毎年、贈与をするごとに、贈与契約を結ぶ
贈与は現金の授受によらず、銀行振込にして履歴を残す
宝くじを共同購入する
税金を払わないようにする別の方法として、宝くじの共同購入が考えられます。お金を出し合って買う形を取り、当選したら全員で当選金を受け取りに行きましょう。
銀行が発行する「宝くじ当せん証明書」に各自が受け取る金額を記載してもらうと、それぞれが宝くじの当せん金として受け取れます。どなたか1人がお金を出して宝くじを買い、残りの人がそれを受け取るのとは違うため、税金(贈与税)もかかりません。
ただし、どういった経緯で宝くじを買い、当選金を受け取ったのかについて税務署から問い合わせがあることも考えられます。スムーズに対応できるよう、記録を残しておきましょう。
まとめ
宝くじに高額当選した場合、当選者であれば税金がかかりません。しかし、当選したお金をあげたり、相続しなければならなくなったりすると、もらった人が税金を支払う必要があるケースも出てきます。受け取った人の負担を和らげるためにも、贈与税がかからない形で渡せるように工夫してみてください。
荒井 美亜
日本FP協会認定AFP、2級FP技能士、貸金業務取扱主任者(試験合格)
FP事務所シルバースプーン代表。税理士事務所、出版社、Webマーケティング会社での勤務を経て、現在はフリーランスのマネーライターとして活動中。日本FP協会の消費者向けイベントにも講師として登壇経験あり。