病院やクリニックなどの医療機関で患者のケアにあたる専門職である看護師は、同年代の一般的な会社員に比べ給料やボーナスが高いと言われています。しかし、どれぐらいの額がもらえるかは勤務先や経験年数によって異なるのが実情です。そこで今回は看護師のボーナスの平均額についてさまざまな角度から紹介します。看護師を目指している人は、ぜひ参考にしてください。
看護師のボーナスの平均額は?
看護師がどのくらいボーナスをもらえるかは、勤務先の病院・クリニックの規模や看護師としてのキャリア、本人の年齢によって異なってきます。そこで、ここでは厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」の結果を用いて、看護師のボーナスを徹底分析してみたいと思います。
病院の規模別ボーナスの平均額
まず、病院・クリニックなど医療機関の規模別のボーナスの平均額です。なお、ここでは規模を勤務先の常用労働者(いわゆる正社員、正職員など)の数で区分しています。
医療機関の規模別ボーナス(年間賞与その他特別給与額)の平均額
出典:厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査 (職種)第1表 職種(小分類)、性別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」
基本的な傾向として、大規模な医療機関になればなるほど、ボーナス(年間賞与その他特別給与額)の額も上がると考えて問題ありません。
年齢別ボーナスの平均額
次に、看護師の年齢別のボーナス(年間賞与その他特別給与額)の平均額を紹介します。
看護師の年齢別ボーナス(年間賞与その他特別給与額)の平均額
出典:厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査 (職種)第5表 職種(小分類)、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」
一般的な会社員と同様、働き盛りとされる40代、50代でボーナスの額がピークに達します。また、医療機関によっては60代、70代でも正職員として働けることがあるため、ある程度ボーナスをもらっている人がいるのも大きな特徴です。
経験年数別ボーナスの平均額
一般企業でも経験年数が長ければ給料とボーナスが上がるのは珍しくありませんが、それは看護師でも同じです。経験年数別ボーナスの平均額を紹介します。
経験年数別ボーナス(年間賞与その他特別給与額)の平均額
出典:厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査 (職種)第10表 職種(小分類)、年齢階級、経験年数階級別所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」
特筆すべきなのは、20代でのボーナスの上がり方です。さすがに初年度の金額はあまり高くありませんが、経験を積むにつれ大幅にアップしていきます。同世代で他の職業についている人に比べ、看護師の場合は金銭的に余裕があることも珍しくありません。
都道府県別ボーナスの平均額
都道府県によって、看護師に支給されるボーナスの平均額は異なります。ただし、一般企業とは違い「大都市は高い、地方はそうではない」といった傾向は顕著ではありません。そこで、看護師のボーナス(年間賞与額)の平均値が高い都道府県を紹介します。
看護師のボーナス(年間賞与その他特別給与額)が高い都道府県
出典:厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査 都道府県、職種(特掲)、性別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)(役職者を除く)」および「都道府県、職種(特掲)、性別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」
福岡県の場合は?
福岡県の場合、看護師のボーナス(年間賞与その他特別給与額)の平均額は69万9,900円でした。これはあくまでも平均値のため、実際にはこの金額以上をもらっている人もいます。
なお、福岡県職員(一般職員)のボーナス(期末・勤勉手当)の平均支給額は、79万6,217円でした。これに関しても全年齢の平均値のため、年齢が低ければ低いほど金額も下がるでしょう。
出典:福岡県「記者発表資料 令和5年12月期の期末・勤勉手当の支給について」
他の医療職と比べて看護師のボーナスは高い?
他の医療職と比べた場合、看護師のボーナスや給料は高いのか、公的なデータから読み解いてみましょう。厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」によれば、看護師を含めた医療職の「年間賞与その他特別給与額」は以下のようになっています。医師、歯科医師と比べると少ないのは確かですが、決して少ないとはいえない水準です。
看護師を含めた医療職のボーナス(年間賞与その他特別給与額)の平均額
出典:厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査 (職種)第1表 職種(小分類)、性別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」
看護師のボーナスはどうやって決まる?
一般企業の場合、ボーナスの査定は目標の達成度合い、仕事に対する姿勢などさまざまな指標を用いて行うのが一般的です。しかし、看護師の場合は事情が異なり、年次・勤怠・役職の3つの要素を用いて査定するのが一般的になっています。
ただし、企業の健康管理部門・医務室・健康管理室などで働くいわゆる「企業看護師」の場合、一般企業と同じような基準でボーナスの査定が行われることもあるので、この限りではありません。
年次査定
年次、つまり入職してからの勤続年数が長くなればなるほど、ボーナスも増えていきます。つまり、新人のうちは安く、経験を積むごとにだんだんと増えていく仕組みです。転職が必要になる事情がなければ、できるだけ同じ場所で働き続ける方がもらえるボーナスの額も大きくなるでしょう。
勤怠査定
勤怠に問題がないかも、ボーナスの査定においては重要な基準となります。就業時間前に遅れず、退勤時間前に職場を離れないようにし、また、タイムカードの打刻忘れにも注意しましょう。
なお、病欠が多かったりするなどの理由で勤務態度に問題があると判断されると査定に響きます。状況次第では日勤のみ、入院設備がないクリニックに転職するなど働き方を見直しましょう。
役職査定
役職についていることがボーナスの査定においてプラス要素に働くことがあるため、ボーナスの額を増やしたいなら昇格を目指しましょう。ただし、一般企業と同じく管理職に相当する役職についた場合、基本給やボーナスは上がるものの、残業代が出なくなることもあります。トータルで見たら手取りが減ることもあるため、就業規則や賃金規定を確認しましょう。
ボーナスがもらえないこともあるので要注意
勤務している病院・クリニックによってはボーナス自体がもらえないことがあるため注意しましょう。給料とは違い、ボーナスの支給は法律で義務付けられていないためです。ボーナスがもらえない理由には、以下が考えられます。
ボーナスがもらえない理由の例
- 契約職員など非正規雇用である
- 病院・クリニックの経営状態が悪化している
- 入職時期との兼ね合いで支給対象外となった
- 産休・育休・休職中である
- 病院・クリニックの経営方針によりボーナスを支給しないことになっている(年俸制の場合も含む)
看護師がボーナスと給与を上げたいなら何をすべき?
看護師がボーナスと給料の額を上げるには、さまざまな方法が考えられます。ここでは具体的な方法として、次の3つを紹介します。
別の病院・クリニックに転職する
給料、ボーナスの額が高い病院・クリニックに転職すれば、おのずと収入も増えるでしょう。ただし、どのような働き方をしたいかによって、適した転職先は異なります。
安定を重視するのであれば、国公立の大学病院、独立行政法人国立病院機構が運営する医療機関を検討しましょう。待遇が国家公務員と同等であるため、安心して働けます。
一方、子どもが小さいうちはパートとして働きたいなどワークライフバランスを重視するなら、美容外科などのクリニックを選択肢に入れましょう。自由診療が前提かつ急患がほぼいないので、夜勤やイレギュラー対応を迫られる可能性は極めて低いためです。
転職エージェントを使うことも視野に
働きながら転職活動をする場合や、自分だけで条件の良い転職先が見つけられそうにない場合は、医師、歯科医師、看護師など医療職に特化した転職エージェントを使うことも視野に入れましょう。
求職者として登録すると専門の担当者がつき、条件に合う求人の提案や応募、面接の日程調整、条件交渉などを代行してくれます。
スキルアップする
転職を前提にせずに給料、ボーナスを上げたいなら、スキルアップが有効です。勤務している病院・クリニックにもよりますが、看護師の場合、以下のいずれかの資格を持っていると資格手当がついたり、給与査定での加点事由になったりします。
看護師のキャリアアップに役立つ資格の例
なお、認定心理士とは一見看護とは関係ないように見えますが、患者やその家族、他の医療従事者との接し方に役立てるという意味で、他の看護師と差別化を図るために役立つでしょう。
春か秋に転職する
どうしても夏・冬に転職しなくてはいけない事情がない限りは、より良い条件で内定が獲得できる可能性がある春か秋に転職するのがおすすめです。
春は退職者が多くなりがちで欠員を補充する必要があるため、好条件の求人が出ることがあります。一方、秋は決算との兼ね合いで経営方針が変わった結果、好条件の求人が出ることがあるでしょう。
まとめ
看護師の強みは、資格さえあれば比較的自由な働き方を選べることです。需要がなくなることはまず考えられない職業である以上、収入アップを求めてボーナスが高い職場に転職することも、一般的な企業に勤める会社員に比べれば達成しやすくなっています。
ただし、ボーナスが高いからといって、自分にとって働きやすい職場とは限りません。さまざまな尺度で「自分にとって働きやすいか」を見極めましょう。
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荒井 美亜
日本FP協会認定AFP、2級FP技能士、貸金業務取扱主任者(試験合格)
FP事務所シルバースプーン代表。税理士事務所、出版社、Webマーケティング会社での勤務を経て、現在はフリーランスのマネーライターとして活動中。日本FP協会の消費者向けイベントにも講師として登壇経験あり。