株式やFXといった投資は専門知識が必要だったりリスクが高かったりするため、初心者には難しく感じます。投資信託は、プロに運用を任せながら低リスクで始められる投資方法です。この記事では投資信託の始め方として、対象の種類や運用方法、気をつけるポイントについて解説します。
投資信託とは
投資信託は多数の投資家から資金を集めて、運用会社がさまざまな投資をする商品です。まずは、投資信託を始める前に理解しておきたい基本知識について解説します。
投資信託の仕組み
多数の投資家から資金を集めて運用し、リターンを分配する仕組みはファンドと呼ばれます。銀行や証券会社などがファンドの販売会社となり、個人投資家に向けてさまざまな商品を提供する仕組みが投資信託です。個人投資家は投資信託を購入するのみで、実際の運用は投資のプロである運用会社が担当します。
投資信託は投資家、販売会社(銀行や証券会社)、運用会社、信託銀行がそれぞれの役割を担う仕組みの商品です。販売会社を通して個人投資家から集めた資金は信託銀行で保管され、運用会社が投資の実行を指図(指示)して株や債券を売買します。
投資信託のリスクとリターン
投資した資金から得られる結果がリターン、期待される利益と損失の振れ幅の大きさがリスクです。投資信託の商品は必ず利益が出るものではなく、損失となる可能性を持つ性質があります。リスクとは危険性ではなく、期待する利益に反して損失が出る可能性の大きさを表すものです。
一般的に期待できるリターンが大きいと、それに反して損失となるリスクが高くなります。リスクを低くするためには、期待するリターンを小さく設定する必要があるのです。
投資信託の手数料
投資信託は購入時、運用期間、売却時、それぞれで手数料が発生します。商品購入時に発生するのは購入時手数料や買付手数料で、購入金額の一定割合で徴収されるのが一般的です。
運用期間に発生するのは、信託報酬と監査報酬になります。信託報酬は、ファンドで運用するための運営や管理にかかる費用です。監査報酬は、投資信託の会計が適切に管理されているか監査を受けるためのコストとなります。投資信託の売却時に発生する手数料は、信託財産留保額です。投資信託では利益や損失だけでなく、手数料を考慮して利回りを計算しましょう。
投資信託の税金
投資信託で運用して利益が出たときの分配金、購入金額を上回った分の売却益に対して、20.315%の税金が発生します。税金の内訳は所得税が15%、住民税が5%、復興特別所得税(2037年まで)が0.315%です。
分配金には、普通分配金と特別分配金の2種類があります。普通分配金は運用による利益を分配するもので、特別分配金は分配後の基準価額が個別元本を下回る金額を払い戻すものです。税金が発生するのは普通分配金のみとなります。NISAは売却益と普通分配金に対する税金が非課税となる点が、投資信託との大きな違いです。
投資信託の種類
投資信託には、ハイリスクハイリターンの商品からローリスクローリターンまであります。また、株式や債券に投資する商品、国内と国外、金などの現物といったさまざまな種類が対象です。
株式
証券取引所に上場している株式を運用する投資信託です。株価の値上がりによる売却益と所有期間の配当金が、利益となります。株価は景気や業績で変動するため利益となる可能性が大きいですが、損失となるリスクが高いです。
株式の投資信託には、いつでも売買できるオープン型、期間を決めて単発募集するスポット型の2種類があります。スポット型は解約できないクローズド期間が設定されるため、流動性の低い点に注意が必要です。株式は、市場が開いていれば自由に売買できます。リスクが高くても大きなリターンを目指したい人におすすめの方法です。
債券
国や地方公共団体、企業が資金調達のために発行する債券で運用する投資信託があります。債券での利益は、金利収入、売却益、満期時の償還金です。債券は満期になると購入金額に利子を加えた分が払い戻されるため、損失となるリスクが低くなります。また、債券は市場金利と逆の動きをするため、景気が落ち込んでいる状況でも安定するのが特徴です。
債券は金利が決まっているため、満期まで保有すると必ず利子が増えて元本割れするリスクがありません。ただし、金利は低く設定されるのが一般的なため、大きな利益は目指しにくいです。
リート(不動産投資信託)
多数の投資家から資金を集めて不動産へ投資する商品がリートです。個人で不動産投資をするためには数千万円の資金が必要ですが、リートでは少額からでも投資できます。不動産への投資で得られる賃料収入や売買益が、投資家の利益として分配されるのです。
リートでは住宅や商業施設、物流施設といった不動産が対象となります。特定の種類に限定して投資するのは特化型です。2種類以上になると複合型、3種類以上は総合型となります。リートは少額から複数の不動産へ投資できるため、初心者やリスクを抑えたい人におすすめの方法です。
国内と海外
投資信託で運用する株式や債券、リートにはそれぞれ国内と国外の商品があります。国内の投資信託は日本の企業が商品を設定し運用するもので、金融庁へ届け出て登録されたものです。商品を設定して運用するのが日本以外の企業だったり、ファンドの国籍が外国だったりするのが海外の投資信託になります。
円建てで運用する商品であっても、日本以外で登録されていれば海外の投資信託です。海外の投資信託で全世界の株式を対象とするものをグローバル型、特定地域に限定するのが地域別型となります。債券は通常型、派生商品型、MMF型の3種類です。
バランスファンド
株式・債券・リートの国内と海外、それぞれを組み合わせた6種類に分散投資するのがバランスファンドです。株式・債券・リートの割合によってリスクとリターンのバランスが異なります。株式の割合が高いとハイリスクハイリターン、債券の割合が高いとローリスクローリターンとなるのです。
株式や債券は、海外のほうが国内よりハイリスクハイリターンとなる傾向があります。個人で複数の商品へ投資するのは手間ですが、バランスファンドを活用すると簡単です。リスクとリターンのバランスを調整して投資したい人におすすめの方法となります。
その他の資産への投資商品
貴金属・農産物・エネルギー資源といった、コモディティ商品で運用する投資信託があります。コモディティ商品は物価上昇による通貨価値の低下に影響されにくいですが、気候や世界情勢による価格変動が生じやすいです。世界的に経済情勢が不安定になって株価が下がると、実物資産に資金が投じられて価格が上昇します。
コモディティ商品で代表的な金は価格変動が比較的小さく、不景気になると価格が上昇する傾向にある資産です。コモディティ商品の投資信託は物価上昇に強く、リスク分散しやすい投資商品になります。
投資信託をはじめる方法
投資信託を始めるためには、口座を開設する銀行や証券会社を選んだり、購入する商品を選んだりする準備が必要です。ここからは、投資信託を始める方法について解説します。
投資の目的と目標を決める
投資信託で運用を始める前に、投資の目的と目標を決めることが大切です。商品を選ぶためにはリスクとリターンのバランスを考えたり、運用期間を通しての期待利回りを計算したりする必要があります。投資で運用した利益の使い道としては、住宅購入の準備資金、子どもの教育費、老後の生活費といった目的が多いです。
目的に応じて運用期間を何年にするか、元本と利益の総額でいくらを目指すかといった目標が決まります。目的と目標に沿って許容できるリスクの範囲内で、目指したいリターンを得られる可能性が高い方法を選ぶようにしましょう。
証券口座を開設する
投資信託の商品を購入するためには、証券口座が必要です。証券口座を持っていない場合は銀行や証券会社で新しく開設します。証券口座はネット証券と対面証券(店舗型)の2種類です。
ネット証券はスマホやPCなどを通して、インターネット上で登録や売買取引が完結できます。ネット証券は無店舗で必要経費が低いため、投資信託の手数料が安いです。対面証券では窓口で相談や質問ができるため、初心者が安心して始められる方法でしょう。ただし、店舗型では人件費や管理費が発生するため、手数料は割高になってしまう点は認識しておきましょう。
投資信託の種類を選ぶ
証券口座を開設したら、目的や目標に見合う投資信託の種類を選びましょう。株式、債券、リート、バランス型、国内と海外など、対象となる商品が多いため、最初は情報収集したり勉強したりすることが必要です。準備できる購入金額や許容できるリスク、目指したいリターンを整理しておくと選びやすくなります。
リスクとリターンだけでなく、商品ごとのメリットとデメリットがあるため、十分に理解したうえで決めることが大切です。
投資信託を購入する
証券口座を開設して買いたい投資信託を決めたら、口座に入金して商品を購入します。証券口座への入金方法や金額の設定は銀行や証券会社によって異なるため、事前に確認しておきましょう。ネット証券では、口座開設時に登録した銀行口座から振り込むことが多いです。
投資信託の運用方法
投資信託の商品にはリスクとリターンのバランスがあり、自分にとって最適な方法で運用することが大切です。ここからは、投資信託の運用方法について解説します。
資産を分散する
株式と債券の両方を購入する方法は、資産を分散する投資となります。資産価値の変動が逆の動きをする商品で運用すると、一方が下がっても他方が上がるため、全体では損失をカバーできるのです。一般的には投資する商品の種類が多いほど資産が分散できて、リスクを抑えられます。1つの商品に限定するより、複数に少額ずつ投資するのが初心者には始めやすい方法です。
購入する時期を分散する
投資信託では商品を高額で一括購入するより、複数回に分けて投資したほうがリスクは抑えられます。株式は購入価格から運用期間を通して値動きが起きるため、購入単価を平均化することがリスク分散になるのです。
1度にまとめて購入して株価が下がると、購入単価は高くなり利回りが低くなります。購入金額を一定にしていると、株価が高いときの購入数は少なく、低いときは多くなって単価が平均化されるのです。
長期的に運用する
投資信託では、長期で運用するほどリスクが小さくなります。世界の経済は長期的に見ると右肩上がりになっていきますが、短期間では上昇と下降を繰り返すためリスクが大きくなるのです。
株価の値上がりによる売却益や為替による利益を狙うのは、投機的な考え方になります。投資信託は長期的に運用しながら利益を最大化するという考え方で扱うと、高い効果を発揮しやすいです。
投資信託で気をつけるポイント
投資信託ではリスク対策や手数料、情報収集などにおいて注意するポイントがあります。
リスク対策を取り入れる
投資信託では株価変動、金利変動、為替変動、価格変動、信用リスクといったリスクが代表的です。これらのリスクへの対策には、分散投資や長期投資といった方法があります。自分の持っている資産を全体的に見て、リスク対策ができていると安心です。リターンだけを考えていると、リスクによって損失となる場合があるため注意しましょう。
手数料と税金を考慮する
投資信託では購入時や運用中、売却時に手数料が発生し、利益に対して税金がかかります。購入金額と最終的な運用結果だけではなく、手数料と税金を考慮して利回りを計算しておくことが大切です。利益が出ていても手数料や税金で目減りしてしまうと、運用利回りが低くなってしまいます。
手数料や税金は購入前にシミュレーションできるため、事前に確認しましょう。
正しい情報を判断材料にする
投資の情報は、公的機関の資料や個人投資家のブログなど多岐に渡ります。投資信託では運用はプロに任せられますが、商品の選択、購入や売却のタイミング、金額の調整は自分の責任です。
投資判断を下すためには、情報の正確さや信ぴょう性に注意しましょう。正しい情報か判断するためのチェック項目を確認することが大切です。以下のような点を確認するとよいでしょう。
誰が出している情報なのか、発行元が明記されている
いつの情報なのか、発行された年代や日付の表示がある
情報を提供している機関の属性(広告や販売が目的になっている情報か)
運用実績を確認する
投資信託を購入したらそのまま放置せず、定期的に運用実績を確認しておくことが大切です。目標通りに運用できているか、手数料を含めた利回りが何%になっているかなど、定期的に確認する項目を整理しておきましょう。
まとめ
投資信託にはさまざまな種類の商品があり、リスクとリターンを考慮して運用しやすい投資方法です。口座開設や商品購入を相談しながら進めたい場合は、銀行の窓口で手続きを進めましょう。投資信託の始め方ガイドとして、対象の種類や運用方法の参考にしてみてください。
■あわせて読みたい記事
・西日本シティ銀行アプリで投資が可能に!スマホで国内株・米国株などへ投資できます
・投資を始める前に読んでおきたい!【初心者向け】おすすめ入門本10選
*投資信託のご留意事項について
商号等:株式会社西日本シティ銀行 登録金融機関 福岡財務支局長(登金)第6号
加入協会:日本証券業協会、一般社団法人金融先物取引業協会
岩崎祐二
FP技能士2級、AFP(日本FP協会)
ライフとキャリアを総合した視点で、人生設計をマンツーマンでサポート。日々の家計管理から、数十年先に向けた資産設計まで実行支援しています。