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高齢者の一人暮らしにはいくら必要?独居老人の問題点や福岡県で行っている対策も紹介

公開日 2025.03.07

高齢者の一人暮らしは、近年増加しています。生活には、家賃や光熱費、食費など、さまざまな支出が必要です。高齢になると、医療費や交通費などがさらにかかる可能性があるでしょう。この記事では福岡県のデータをもとに、高齢者の一人暮らしに必要な費用と問題点、地域での支援体制について解説します。

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高齢者の一人暮らしの現状と生活費

まずは、65歳以上の単身世帯の現状と必要な生活費を見ていきましょう。高齢者の一人暮らしには、経済面だけでなく、日常生活においてもいくつかの課題があります。

福岡県の高齢化の現状

厚生労働省の「令和5年簡易生命表」によると、平均寿命(全国)は、男性81.09歳、女性87.14歳でした。この年齢は、0歳時点の平均余命を表しています。また、65歳の平均余命は、男性19.52年、女性24.38年です。このことから、男女ともに最低でも、65歳から90歳ぐらいまでの生活を考える必要があるでしょう。

福岡県の高齢化の現状についても確認しておきます。福岡市と北九州市のデータを見てみましょう。福岡市の高齢化率は約22%で、75歳以上の後期高齢化率は約12%となっています。一方、北九州市の高齢化率は約32%で、後期高齢化率は約18%です。

福岡県内で最も高齢化が進んでいる地域として、東峰村が高齢化率約48%、添田町が後期高齢化率約26%となっています。団塊の世代が現在70代前半で、団塊ジュニア世代が50代のため、高齢化率は今後も上がると予測できます。

また、平均寿命だけでなく、サポートなしで一人で生活できる「健康寿命」についても確認しておきます。厚生労働省「令和6年版高齢社会白書」によると、男性の平均寿命81.41歳に対して、健康寿命が72.68年、女性の平均寿命87.45歳に対して、健康寿命が75.38年となっています。男性は約8年、女性は約12年を何らかのサポートを受けながら生活する必要があると考えられます。

参考元:厚生労働省「令和5年簡易生命表の概況」 「令和6年版高齢社会白書」 福岡県庁「福岡県の高齢者人口及び高齢化率の推移(令和6年10月1日現在)」

老後の一人暮らしを考える場合は90~100歳までを目標に、生活費や介護費用をどのように工面するかという課題に直面します。次章では、統計データから平均生活費を見ていきます。

高齢者の一人暮らしの基本的な生活費

総務省「家計調査(2024年)」から、65歳以上の一人暮らし(単身世帯)の生活費について確認します。

65歳以上単身世帯の基本属性(2024年家計調査)

出典元:総務省「家計調査(2024年)」

データの属性として、世帯主の平均年齢が約76.5歳、有業者比率は約0.18であるため、ほとんどが年金を中心に生活していると考えられます。持ち家があれば家賃・ローンの支払はありませんが、修繕費や固定資産税の負担があります。賃貸であれば家賃の支払いが必要です。

次に、具体的な生活費と支出項目を確認しましょう。

65歳以上単身世帯の月間消費支出(2024年家計調査)

出典元:総務省「家計調査(2024年)」

月の生活費(消費支出)は約15万円で、このうち最も大きな割合を占めるのが食費の40,527円です。一人暮らしの場合、まとめ買いや食材の使い切りが難しく、結果的に食費が高くなる傾向があります。また、世帯人数が少なくても一定額が必要な固定費である交通・通信費が16,230円、光熱・水道費が14,434円です。

交通費については、足腰が弱くなると公共交通機関やタクシーを利用する機会が増えます。また、夏は熱中症の防止からクーラーを使う必要があり、電気代の負担が大きくなるおそれがあります。

医療面では、保健医療費として月額8,178円を支出していますが、これは通常の通院や薬代程度の金額です。年齢とともに増える可能性がある入院費用や介護費用については、別途準備が必要になるでしょう。

教養娯楽費は15,748円となっており、趣味や娯楽にも一定の支出がされています。ただし、この消費支出には、将来の医療費や介護費用の備え、住宅の大規模修繕などの臨時的な支出は含まれていないことに注意が必要です。

高齢者の一人暮らしの問題点

高齢者の一人暮らしには、経済面と生活面の両方でさまざまな課題があります。ここでは、独居老人の定義から具体的な問題点とその対策について見ていきましょう。

独居老人とは

「独居老人」とは、65歳以上の高齢者が一人で生活している状態のことです。近年、核家族化や未婚率の上昇により、独居老人の数は増加傾向にあります。一人暮らしの高齢者は、日常生活での自立が求められる一方で、緊急時の対応や社会との関わりの維持が課題となっています。

体力が落ちて金銭的に負担のかかる交友を避けがちになると、社会との関わりがなくなっていくでしょう。

経済面での不安

経済的な不安は、独居老人が直面する最大の課題のひとつです。有業者比率が0.18と低く、大半が年金収入に依存しています。固定費(光熱費、通信費など)は世帯人数が少なくても一定額が必要で、収入が限られるなかでの支出管理が重要となります。

また、突発的な住宅修繕費や医療費への備えも必要です。社会保障や行政サービスを上手く活用することが求められ、必要な情報を収集できるかどうかも重要となります。

安全と健康面での課題

高齢者の一人暮らしでは、日々の健康管理と緊急時の対応が大きな課題となります。突然の体調不良や転倒事故の際、速やかに助けを求められない可能性があります。特に夜間の緊急事態では近隣住民への連絡が難しく、重大な事態に発展するリスクがあるでしょう。

また、定期的な通院や服薬管理も重要な課題です。加齢に伴い、複数の医療機関への通院や多剤服用が必要となることもあり、自己管理が難しくなってきます。さらに、認知機能の低下により、服薬の失敗や受診の遅れにつながる可能性もあるでしょう。

さらに、予防医療の面でも課題があります。健康診断の定期的な受診や、体調不良時の早期受診をためらってしまい、病状が重症化するケースも見られます。このような健康管理の課題に対しては、かかりつけ医の確保や、地域の医療機関との関係づくりが重要です。

一人暮らしならではの生活上の課題

日々の生活では、食事の準備が大きな課題となります。一人分の食材購入や調理は非効率になりがちで、栄養バランスの管理も難しくなります。また、掃除や洗濯、買い物といった家事全般を一人でこなす必要があり、体力的な負担も大きくなるものです。一人暮らしの高齢者は、社会的孤立のリスクも高くなります。

趣味の活動や友人との交流が減少し、会話の機会が少なくなりがちです。テレビやラジオが唯一の話し相手という状況も、珍しくありません。このような孤立は、心身の健康にも影響を及ぼす可能性があります。近隣住民や地域コミュニティとの関係を築き、社会との接点を保つことが重要です。

福岡県内の先進的な見守り支援

高齢者の日々の生活や精神的な支援をサポートするために、自治体ではさまざまな取り組みがなされています。ここでは、福岡県内で行われている見守り支援を紹介します。

福岡市の「福岡見守るっ隊」の取り組み

福岡市では、見守り推進プロジェクトの一環で、日ごろから自治会や民生委員が見守り活動に取り組んでいるだけでなく、自宅訪問する業務の際に、異変に気付いた際に見守りダイヤルへの通報をする「福岡見守るっ隊」との協力体制を構築しています。

自宅訪問する企業として、電気・ガス、水道、新聞販売店、宅配業者などがあり、以下のような異変に気付いた場合に通報し、担当が現場へ急行する仕組みです。

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● 郵便物が溜まっている

● 洗濯物が干されたまま

● 電灯が昼夜ついている

● 異臭がする など

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電話は365日24時間対応しており、現場対応も8時~20時と長時間体制がとられています。

出典元:福岡市「見守り推進プロジェクト」

北九州市の「いのちをつなぐネットワーク」

北九州市では以前から住民を中心に小地域福祉活動を行い、平成6年から「ふれあいネットワーク活動」を導入しました。令和6年で30周年を迎えたこの活動は、市内すべての155校(地)区社会福祉協議会が中?となって、「見守り」「話し合い」「助け合い」を行っています。

一方、ふれあいネットワーク活動などの仕組みとともに、高齢者や支援が必要な人を地域で見守り、必要なサービスにつなげていく「いのちをつなぐネットワーク」活動もあります。この活動では、「見つける」「つなげる」「見守る」をキーワードに、支援が必要な人が孤立しないようにサポートしています。

出典元:社会福祉法人北九州市社会福祉協議会「ふれあいネットワーク活動」 北九州市「いのちをつなぐネットワーク」

今回は福岡市と北九州市の取り組みを紹介しましたが、ほかの自治体でも行われています。老後に生活する地域のネットワークを事前に調べておくと安心です。

まとめ

高齢者の一人暮らしでは日常生活費に加えて、突発的な医療費や住宅修繕費など、予期せぬ支出への備えも重要です。持ち家か賃貸か、健康状態、生活スタイルによっても必要な費用は変動します。

福岡県では、福岡市の「福岡見守るっ隊」や北九州市の「いのちをつなぐネットワーク」など、地域に根ざした支援体制が整備されています。これらのサービスを上手く活用しながら、安心できる一人暮らしを実現することが大切です。将来の経済的不安や生活上の課題に備え、早めの情報収集と準備を心がけましょう。

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