定年が近づく50代は、老後のことを考える機会が多くなります。中には、老後の生活資金に不安を感じている人もいるかもしれません。そこで本記事では、50代からの資産形成について解説します。NISAやiDeCoで資産運用を始めるメリットやデメリットも紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
50代からでも資産運用を始めるべき理由
資産運用は、50代からでも始めるべきです。ではなぜ、50代からでも資産運用を始めるべきなのでしょうか。まずは理由を見ていきましょう。
長期投資でお金を増やせる可能性があるから
投資は、長期間おこなうことで効果を得やすいです。日本人の平均寿命は約85歳のため、50代から始めても遅くはありません。50歳で100万円を投資して、年利3%で運用した場合の資産の増え方は以下のとおりです。
年数 |
51歳 |
53歳 |
55歳 |
60歳 |
70歳 |
80歳 |
資産評価額 |
103万円 |
109万円 |
116万円 |
135万円 |
182万円 |
246万円 |
80歳時点で、資産は2.46倍に増加します。50代からでも、余剰資金で長期投資を始めるのがおすすめです。
預金ではお金の価値が目減りする可能性があるから
現在の日本は低金利のため、預金ではお金が増えづらいです。一方で、物価の上昇は続いています。そのため、預金だけでは物価上昇により実質的な資産価値が目減りする可能性が高いのです。年間2%の物価上昇が続いた場合、現在3万円で買えるモノの価格は以下のように推移します。
経過年数 |
1年後 |
3年後 |
5年後 |
10年後 |
20年後 |
30年後 |
購入に必要な金額 |
3万600円 |
3万1,900円 |
3万3,200円 |
3万6,600円 |
4万4,700円 |
5万4,600円 |
毎年2%のインフレが続いた場合、現在3万円のものを30年後に買うために必要な金額は5万4600円です。資産運用でお金を増やさないと、実質的な購買力が落ちていくことがわかります。物価上昇による資産価値の目減りを防ぐためにも、ぜひ50代からの資産運用を検討してみてください。
つみたてNISAとは
50代から老後のための資産運用を考えている人の中には、「つみたてNISA」の利用を検討している人もいるでしょう。そこでここからは、つみたてNISAの概要を解説します。
投資で得た利益が20年間非課税となる制度
つみたてNISAは、投資で得た利益に対して20年間税金が非課税となる制度です。通常、投資で得た利益に対して約20%の税金がかかります。40万円で購入した投資信託が60万円に値上がりしたタイミングで売却した場合、納税が必要な税金は約4万円(利益20万円×20%)です。ただし、つみたてNISAでは年間40万円の投資分まで税金がかかりません。
非課税期間は20年間のため、2023年(令和5年)に購入した投資商品は2042年まで非課税で運用できます。また、つみたてNISAは原則、毎月同額を投資する仕組みです。一度積立額を設定すれば、自動で毎月投資商品を購入できます。そのため、頻繁な投資商品の購入を面倒に感じる人にも、つみたてNISAはおすすめの資産形成方法です。
つみたてNISA・一般NISA・iDeCoの違い
一般NISAやiDeCoを使った老後資金の運用を検討している人もいるでしょう。そこで、それぞれの違いをわかりやすく表にしました。
|
つみたてNISA |
一般NISA |
iDeCo |
対象者 |
18歳以上 |
18歳以上 |
国民年金保険の被保険者 |
税優遇 |
売却益・分配金等が非課税 |
売却益・分配金等が非課税 |
売却益・分配金等が非課税 拠出金が所得控除の対象 |
年間投資可能枠 |
40万円 |
120万円 |
6万〜81万6,000円(職業により異なる) |
非課税での保有可能期間 |
20年間 |
5年間 |
運用期間中 |
商品購入可能期間 |
2023年(令和5年)まで |
2023年(令和5年)まで |
原則60歳まで |
投資対象商品 |
金融庁が厳選した投資信託のみ |
投資信託・上場株式・REITなど |
投資信託・預金など |
投資商品購入方法 |
積立 |
一括・積立 |
積立 |
途中での引き出し |
可能 |
可能 |
原則60歳まで不可 |
それぞれ、税優遇や非課税枠・投資対象商品などが異なります。また、つみたてNISAと一般NISAは併用ができません。いずれかを選択しての資産運用が必要です。
2024年からは新しいNISA制度が開始予定
2024年からは、現行のつみたてNISAと一般NISAに代わって「新しいNISA制度」が開始予定です。つみたてNISAが「つみたて投資枠」、一般NISAが「成長投資枠」に名前を変えて併用可能となります。
さらに、年間投資可能枠は360万円に増額予定です。2024年からは、新しいNISA制度を利用した資産形成をおこないましょう。
現行制度で50代から始めるならどれがおすすめ?
50代から老後資金のための資産運用を始める場合、つみたてNISAと一般NISA・iDeCoのどれがおすすめなのでしょうか。それぞれのメリットとデメリットを紹介します。
つみたてNISAのメリットとデメリット
つみたてNISAで資産運用を始めるメリットとデメリットを紹介します。
メリット
つみたてNISAの主なメリットは以下のとおりです。
-
自動で資産を貯められる
-
非課税期間が20年間
-
基準を満たした商品にのみ投資できる
-
投資信託で分散投資ができる
つみたてNISAは、毎月の積立額を設定すれば自動で投資が可能です。また、非課税期間が20年間と長いことも特徴です。長期投資をおこないたい人にもおすすめの制度となっています。
さらに、つみたてNISAで投資可能な商品は金融庁が定めた基準を満たす投資信託のみです。投資可能な商品は手数料が低く設定されているため、コストを抑えて比較的安全に投資をおこないたい人にもつみたてNISAは使いやすい制度となっています。
デメリット
つみたてNISAの主なデメリットは以下のとおりです。
-
年間投資可能枠が40万円
-
投資信託以外に投資できない
つみたてNISAは非課税期間が20年間と長い一方で、投資可能な額は年間40万円と少額です。そのため、年間40万円よりも多くの額を投資したい人は一般NISAを検討してみてください。
また、投資可能な商品は、投資信託に限定されています。株式やREIT、金などの投資信託以外の商品に投資したい人にとって、投資商品に制限があることはつみたてNISAのデメリットでしょう。
一般NISAのメリットとデメリット
一般NISAで老後に向けた資産運用を始めるメリットとデメリットを紹介します。
メリット
一般NISAの主なメリットは以下のとおりです。
-
年間投資可能枠が120万円
-
投資対象商品が多い
-
好きなタイミングで投資できる
一般NISAは年間120万円まで非課税で投資が可能です。そのため、資産運用に回すお金が多くある人は一般NISAでの老後資金の運用を検討してみてください。
また、一般NISAでは投資信託以外にも株式やETF、REITなどのさまざまな商品に投資できます。多くの投資対象から商品を選びたい50代にも、一般NISAはおすすめです。
デメリット
一般NISAで資産運用をおこなう主なデメリットは、以下のとおりとなります。
-
非課税期間が5年間
一般NISAは非課税期間が5年間です。2023年に投資した商品は、2027年に非課税期間が終了します。そのため、5年を超えた長期投資で非課税の恩恵を受けたい人にとって、一般NISAの非課税期間の短さはデメリットでしょう。より長い非課税期間で資産運用をしたい50代は、つみたてNISAかiDeCoの利用を検討してみてください。
iDeCoのメリットとデメリット
iDeCoで資産運用を始めるメリットとデメリットを紹介します。
メリット
iDeCoの主なメリットは以下のとおりです。
-
掛金が所得控除の対象になる
-
非課税期間に制限がない
iDeCoは、掛金が全額所得控除の対象となります。所得控除とは、掛金が所得から控除されて所得税と住民税が安くなる仕組みです。例えば、住民税率10%、所得税率10%の人が年間に10万円をiDeCoに拠出した場合、2万円(10万円×20%)税金が安くなります。資産運用をしながら節税もできることは、iDeCoの大きなメリットです。
さらに、iDeCoは非課税期間に制限がありません。75歳までに資産を引き出す必要はありますが、それまでは制限なく非課税で運用が可能です。そのため、長期的な資産運用がしたい50代にとって、iDeCoはおすすめの制度となっています。
デメリット
iDeCoの主なデメリットは以下のとおりとなります。
-
原則60歳まで引き出せない
-
受取時に税金がかかる場合もある
iDeCoは、原則60歳まで引き出せません。急にまとまったお金が必要となった際などに資産を引き出せないのは、iDeCoのデメリットです。また、iDeCoは受取時に税金がかかる場合があります。
税金の金額は、資金の受け取り方や退職金の金額などによりさまざまです。受け取り時に税金を考慮しなくてはいけないことも、iDeCoのデメリットとなります。
つみたてNISAの始め方
ここからは、50代からのつみたてNISAの始め方を解説します。
金融機関を選ぶ
まずは、つみたてNISA口座を開設する金融機関を選びましょう。つみたてNISAは、原則どの金融機関でも手数料に違いはありません。一方で、取り扱い商品には違いがあります。ぜひ、自分の投資したい商品を取り扱っている金融機関を探してみてください。
NISA口座開設の申請をする
口座を開設する金融機関を決めたら、口座開設の申請をします。多くの金融機関ではネットからの申請が可能です。申し込みをする金融機関のホームページなどにアクセスし、申し込み手続きをおこなってください。
まとめ
50代からでも、資産運用は遅くありません。つみたてNISAや一般NISA・iDeCoなどを利用して、50代からの資産運用を始めましょう。また、西日本シティ銀行では9種類の「つみたてNISA専用ファンド」を用意しています。つみたてNISAを始める人は、ぜひ西日本シティ銀行での口座開設を検討してみてください。
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*投資信託のご留意事項について
商号等:株式会社西日本シティ銀行 登録金融機関 福岡財務支局長(登金)第6号
加入協会:日本証券業協会、一般社団法人金融先物取引業協会
苛原 寛
FP1級、簿記2級
大学卒業後、東京海上日動火災保険株式会社に就職。法人営業部で保険提案を3年間行ったのちに独立。現在はフリーランスとして、お金に関するWeb記事の執筆や個人のライフプランニング作成、実行支援を行っている。