通常、お金を人に贈ることは贈与となります。それでは、離れて暮らす子どもや親への仕送りは贈与になるのでしょうか。本記事では仕送りと贈与の違いや課税対象となるケース、注意点について解説します。
仕送りと贈与の違いとは
仕送りと贈与はいずれも自分以外の人にお金を渡す行為ですが、実際はさまざまな違いがあります。一般的な仕送りのイメージは、離れて暮らす家族へ生活費として送金することではないでしょうか。一方の贈与も仕送りと似ていて、家族や身近な人へお金を渡す行為をイメージするでしょう。
まずは、仕送りと贈与の概要と違いについて解説します。
生活費としての送金は仕送り
仕送りは、別居する家族に対し生活費相当分の資金を送る行為です。別居する家族に対する送金であっても、生活費に充当する以外の目的では贈与にあたります。
仕送りの主なものとして、離れて暮らす親や県外の学校へ通う子どもへ生活費を毎月送ることなどが挙げられます。
必要な範囲の仕送りは贈与にあたらない
国税庁の「贈与税がかからない場合」では、生活費として必要な範囲の送金であれば贈与にあたらないと明記しています。
また「夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの」としています。
生活費以外の目的での送金は贈与
預金や投資など、生活費以外の目的での送金は贈与にあたります。たとえ生活費目的で資金を送っても、実際は預金や投資に充てていた場合には贈与とみなされることがあります。なお、車や家などの財産を譲り渡すことでも、贈与は成立するのです。
仕送りは原則として確定申告不要
仕送り自体は生活に必要な資金であるため、確定申告は不要です。
仕送り対象となる人(仕送りをもらっている子どもや親など)が扶養控除の要件を満たす場合は、仕送りしている人が確定申告や勤務先所定の手続きをすることで節税になります。
扶養控除の適用対象なら手続きが必要
生計を一にする親族等に対して仕送りをする場合、一定の要件を満たすことで扶養控除が適用されます。扶養控除はその親族の年齢や属性によって、38万〜63万円の控除額が発生します。
扶養控除を適用する場合には、別途手続きが必要です。会社員や公務員などの給与所得者は勤務先に扶養控除等申告書を提出し、年末調整で扶養控除の適用を受けます。個人事業主など自分で確定申告を行う場合は、忘れずに扶養控除を申告しましょう。
扶養控除の適用要件
扶養控除の対象となるには、以下の要件を満たす必要があります。
16歳以上の6親等内の血族、および3親等内の姻族である
年間の合計所得金額が48万円以下である
扶養する人と生計を一にしている
扶養控除の種類と控除額
控除の種類 | 対象となる年齢・要件 | 控除額 |
一般扶養親族 | 16歳以上19歳未満 23歳以上69歳未満 | 38万円 |
特定扶養親族 | 19歳以上23歳未満 | 63万円 |
老人扶養親族 | 70歳以上の扶養親族 | 48万円 |
同居老親等 | 老人扶養親族に該当し、納税者本人または納税者の配偶者の直系尊属であり同居している | 58万円 |
いくらまでなら贈与が非課税になる?
年間110万円の贈与税基礎控除額の範囲内であれば、送金した使い道にかかわらず贈与税は発生しません。つまり、年間110万円までの財産の移転であれば非課税扱いになるため、贈与税の申告も不要です。
贈与税における非課税特例
贈与税の基礎控除額は年間110万円ですが、それを超える財産の移転でも非課税になる特例があります。主な贈与税の非課税特例は、以下のとおりです。
直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税(500万円または1,000万円まで)
直系尊属から教育資金等の一括贈与を受けた場合の非課税(1,500万円まで)
直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税(1,000万円まで)
出典:国税庁「贈与税がかからない場合」
贈与専用口座も活用しよう
西日本シティ銀行では「NCB結婚・子育て贈与専用口座」を準備しています。結婚・子育て資金の一括贈与に関する非課税制度を活用するために、専用口座で管理ができるという商品です。結婚・子育て専用口座に関する悩みは、西日本シティ銀行で相談してみましょう。
贈与税の注意点
贈与税は、贈与者ではなく受贈者がいくらもらったかによって課税されるかどうかが決まります。贈与者とは財産を渡す人、受贈者とは受け取る人のことです。つまり、贈与税の基礎控除額である年間110万円というのは、受贈者の年間の合計金額です。
たとえば、父と母からそれぞれ年間110万円ずつもらったとします。これでは220万円もらったことになり、贈与税が課税されるのです。財産の移転を受けた場合は、誰からいつ贈与を受けたかを把握し、基礎控除額についても常に意識することをおすすめします。
仕送りの注意点
仕送りと贈与は、生活に必要な資金であるか否かによって取り扱いが変わります。注意したいのは、仕送りだと思ってお金を送っていた場合でも贈与になる可能性があるという点です。
過分な金額であれば贈与とみなされることがある
仕送りは、あくまでも生活費相当分の金額が対象です。通常必要とされる金額を超えた資金を仕送りしている場合は、税務署から指摘されることもあります。
このような事態を防ぐために、仕送りを受ける側は実際にかかった生活費の領収書を残しておくと良いでしょう。親への仕送りの場合も同様で、一時的に介護費や医療費がかさんだ場合には領収書を残しておいてください。また、介護費用や医療費の清算後に実際に発生した費用分を、後日送金する流れでも良いでしょう。
受け取る側は仕送りの使い道に注意する
生活費として仕送りをしているということを、お互いに明確にしておきましょう。特に受け取る側は、注意が必要です。大事なお金だと思うあまり仕送り金額に一切手を付けず貯金していると、贈与と指摘されることがあります。
仕送りを送る側と受け取る側で、実際にいくらくらいが生活費として妥当なのか相談して決めましょう。
まとめ
通常想定される生活費相当分であれば、仕送りに税金はかかりません。しかし、過分な金額の送金や、仕送りを受け取る側が預金や投資に充てていれば贈与とみなされる場合があります。せっかくの仕送りで課税されないためには、送る側と受け取る側でしっかり話し合いをして共通理解をすることが大切です。
大野翠
芙蓉宅建FPオフィス代表、FP技能士センター正会員
金融業界歴10年目、お金と不動産の専門家。生命保険、損害保険、各種金融商品の販売を一切行わない「完全独立系FP」として、プロの立場から公平かつ根拠のしっかりしたコンサルティングを開催している。