飲料メーカーに務める三浦崇さん(43歳)は、妻・美緒さん(45歳)、長女・心海さん(15歳)・悠太くん(12歳)の4人家族。最近はリモートワークも増え子ども達と過ごす時間も多いそうですが、子どもが小さい頃は仕事が忙しく、なかなか育児の時間もとれなかったと振り返ります。多忙な中での子育てで心がけてきたこと、夫婦のコミュニケーションなど、さまざまなお話を伺いました。
■Profile
三浦 崇さん(みうら たかし)さん
コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社 勤務
1979年、福岡県大牟田市生まれ。大学卒業後、南九州コカ・コーラボトリング株式会社(現・コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社)に入社。自動販売機の営業を中心に、宮崎・大分での勤務を経て、2016年より福岡へ。現在はベンディング部門の運営・サポート業務を担当する部署で、基本リモートワークでの勤務。高校生と小学生の二人の子育て中。
結婚後しばらくは、二人の時間を大事に
――二人の出会いをお聞かせください。
大学時代にバンドをやっていたのですが、ある時、バンドのメンバーと女性の友人数人で食事会を開いたんです。そこで出会ったのが妻の美緒でした。付き合い始めた時は大学4年の秋頃で、翌年には就職し私は宮崎へ配属。彼女は福岡で就職していたので、お互い行ったり来たりの遠距離恋愛でした。その後、大分に転勤してしばらくして、私が24歳の時に結婚しました。
――結婚前、二人で子どもを持つことや育て方などについて話はしましたか?
はい。「二人くらいは欲しいねー」と話していました。自分たちもそれぞれ兄弟がいたので楽しいと思っていたし、「叶うなら男女どちらも育ててみたいね」とも話していました。
――第一子は結婚後すぐに授かったんですか?
いえ。お互い若かったのもあって、「しばらくは二人の時間を楽しみたいよね」という話をして。私が27歳、彼女が28歳で長女の心海を授かりました。
多忙が続き、子どもの寝顔しか見られない日々
――子どもが産まれて、生活はどう変わりましたか?
私の当時の業務は朝早く夜も遅いことが多く、子どもの寝顔しか見られない時も多かったですね。休みの日は子どもを連れていろいろと出かけていましたが。当時大分に住んでいたのですが、あまりに忙しかった時は、妻と子どもたちにしばらく福岡の実家に帰ってもらったりもしました。
――美緒さんも大変だったでしょうね。
そうですね。でも私は当時「男は仕事を頑張って、奥さんが家庭を守る」という古い価値観があって、「若いんだし自分たちだけで大丈夫だろう」と甘く考えていて。それで時々、妻と衝突してしまうこともありましたね。加えてうちは転勤族で孤立しがちでしたので、妻と話し合い、必要な時は実家を頼らせてもらおうということになりました。
――考えが変わったのは何かきっかけがあったんですか?
うーん、子どもが産まれたからいきなり変わるという感じではなかったですし、やっぱり私自身が育った環境もあって、すぐには難しかったです。自分の母を理想だと思いこんでしまっていて。でも、冷静に周りを見てみると働きながら協力して子育てしている家庭もあれば、そうでない家もあったり…価値観は人それぞれだなと。時には自分の考え方を変えていくのも大事だなと思うようになりました。それから妻がしっかり自分の意見や希望を言ってくれたのも良かったです。
――美緒さんとの意思疎通がしっかり取れたんですね。
二十代前半から付き合って、結婚してからもしばらく二人で過ごしていたのが良かったのかもしれません。お互いのことをよく分かった上で、遠慮せずに話ができるので。
働き方が変わり、家事育児の大変さを実感
――初めてのお子さんと二人目では何か変化はありましたか?
これは妻曰くですが、二人目だとノウハウがわかっている分、一人目に比べると大変さは少なかったようです。泣いている理由とかもわかりますし。もちろん女の子と男の子なので、わからないところもあったりしましたが。性格は正反対で、心海は天真爛漫、悠太はどちらかというと寡黙なタイプです。心海がよく悠太の面倒をみてくれますし、助かっています。
――現在は福岡在住ということですが、子育ての状況はどう変わりましたか?
2016年から福岡市に住んでいますが、妻の実家も近くなりましたし、やっぱり安心感がありますね。息子の悠太が小学校に入学してから妻もパートを始めました。また、この春から私もリモートワークが中心になったので、子どもと過ごす時間も増えました。
――仕事と家事育児のバランスはどう取られていますか?
コアタイムのあるフレックス制なので、やるべき仕事をしながら、家族との時間も持てるようにしています。通勤時間が減ったのは本当に大きいですね。在宅ワークの時は、私が昼食を作ることも多いです。特に今は夏休み(取材時)で、妻がパートで不在にしていることも多いので。独身時代から料理は好きでしたし、皿洗いや台所や水回りの掃除も好きですね。やり始めると凝り性なんですよ(笑)。
――しっかり家事もされているんですね。
いやいや…今やっと、家事育児の大変さを身にしみて実感しています。改めて振り返ると、妻が大変だったことを本当には理解してなかったんですよね。
キャンプや山登りを通して、達成感や判断力を育む
――お子さんが大きくなられた現在は、どのような関わりを持たれていますか?
平日は宿題を見たりします。私の昔の夢は美術の先生で今でも絵を描くんですが、美術の宿題を一緒にしたりとか、あとは英語と国語くらいですかね。理数系は苦手なので妻にお願いしています(笑)。また、これは子どもが小さい頃からですが、週末や休みの日は一緒に出かけるようにしています。
――お子さんとどこに行くのが多いですか?
アウトドアが多いですね。私がサーフィンをするので、まだ小さかった時から一緒に海へ行っていました。今はキャンプや山登りにもよく行きます。私自身、幼少期はボーイスカウトにいて、父からもいろいろと教えてもらいました。今自分の子どもを育てる上で、親から学んだことが糧になっています。
――アウトドアでの体験を育児に生かしておられるんですね。
はい。たとえば登山では達成感を味わってもらいたいと思っています。自分の脚で登頂したという「自信」にもつながりますし。「あの時に登った山、きつかったけど景色が最高だったね。山頂で食べたラーメンうまかったね」と、思い出を共有するのも楽しいです。キャンプでは、自分の手で作業することで、責任感や判断力が身につきます。ナイフやガスバーナーなど危険が伴う道具も、実際に使ってみないと危険度が分からないですよね。私も子どもの頃に父からサバイバルナイフをプレゼントされたんですが、自分の子どもたちにも、体験を通して正しい使い方を教えるようにしています。
親自身が楽しむことで、子どもたちも心から楽しめる
――育児を経験してご自身にも変化がありましたか?
あんまり変わってないかな…いつまでたっても私自身が子どもで、いつか娘や息子に追い抜かれるかも(笑)。何でも子どもたちと一緒に楽しんでやっているので、「育児で自分の時間がとれない」というストレスは感じないです。時々ひとりキャンプにも行って、家族や将来のことをじっくり考える時間にしています。取引先の方とキャンプやアウトドアの話で盛り上がることもあって、仕事でも役立っていますよ。
――子育てを通して、人間関係も広がりましたか?
そうですね。特に、娘が小学生の頃から参加している「おやじの会」は、私自身も楽しくて長く続けています。住んでいる小学校校区のボランティア団体で、親子料理教室などいろいろなイベントを開催しています。「できるときに、できることを、できるかぎりやる」という無理のないコンセプトで、子育てや地域活動を楽しめるのがいいですね。現役メンバーは40人くらいいるんですが、実は今年から会長になっちゃいました!
――現在、心海さんは高校生、悠太くんは小学6年生ということで、そろそろ難しい年頃ですか?
うーん、今のところそうでもないですね。自分自身を振り返ると、もっと反抗していたと思うのですが(笑)。親として接するというよりは、自分も一緒に楽しい時間を共有しようと心がけてきたのも、もしかしたら良かったのかなと思います。
――子どもと同じ目線で、ご自身が楽しんでいらっしゃるんですね。
そうですね。たた、叱る時はしっかり叱ります。家族で決めた約束事を守れなかった時とか。怒られてもケロッとしていることもありますが、本当に響いているかどうかは表情を見ると分かりますから。
――どんなルールを決めているんですか?
例えば帰宅時間とかですね。それも、こちらが提示するのではなく、子ども本人と話して、お互い納得の上で決めるようにしています。また、食卓は必ず一緒に囲むようにしていて、料理の味をちゃんと味わってほしいのと会話を大事にしたいのでここ数年はテレビも消しています。
――食事中にテレビを消すルール、続けるのは意外と大変ですよね。
かわりに音楽をかけるようにしています。最近私はカレー作りにハマっているのですが、カレーの時はインド音楽とか(笑)。でも食後には、テレビも家族で楽しんでいますよ。先日、私が子どもの頃に好きだった「バカ殿」をみんなで観て爆笑していた時、ふと「あー家族だなー」なんて思ったりしました。
今しかできない子育てを、思い切り楽しみたい
――子どもにはどのように育ってほしいですか?
とにかくいろいろな経験をして、感性や想像力と生きる力をつけて欲しいと思っています。自分で考えて、自分で動ける力ですね。私も楽しみながら、自分が教えられることは教えたいと思っています。心海は友達と組んだバンドでドラムをしているのですが、私も少しかじっていたので教えたりしています。また学生時代はバスケ部だったので、悠太がやっているミニバスも時々教えています。
――最後に、これからパパになる人たちや子育て中のパパにメッセージをお願いします
子どもの成長はとにかく早いですし、子育てって今しかできないことです。自分も一緒にいろいろな経験を楽しみながら、成長過程をみていくのが良いと思います。
(取材後記)
子どもたちと同じ視点に立ち、共に人生を楽しむ三浦さん。そのまっすぐな育児には、ご自身が両親から受け継いだ教えや愛情が表れているようでした。大変なことも多い子育ての日々で、つい忘れがちな親自身が「楽しむ」ことの大切さを、改めて感じた取材でした。
西紀子
フリーライター・編集者
福岡市出身。大学卒業後、フリーペーパー編集部や企画制作プロダクションにて編集・ライティング業務に従事。2017年よりフリーランス。未就学児2人の子育てに奮闘中。