東京五輪・パラリンピックと日本経済| 西日本シティTT証券チーフアナリスト 松本義一郎

東京五輪・パラリンピックと日本経済

明日の日本は今日より良くなる?(SDGs)

いよいよ東京五輪が始まります。今回の東京五輪はコロナという災厄に、徹底的に祟られながら幕を開けることになりました。

 昨年の開催延期から始まり、今年に入っても、開催の是非が政治問題化し、最後の最後には無観客開催となってしまいました。大会主催者の舌禍も含めて、これだけ国民に歓迎されない五輪は初めてでしょうし、いざ開幕が近づいても、期待よりも不安の方が数倍大きな状態が続いています。

 それでは、今回の東京五輪開催は日本経済にとって、どういう位置づけになるかを考えてみましょう。「こんなに嫌われて、しかも無観客では経済にマイナスだ。」という極端な論調も聞かれますが、純経済的にみれば少なくともマイナスの点はありません。

 五輪開催前には一般的に、大規模なインフラ投資が景気にプラスになりますが、五輪開催後はどうでしょうか。コロナ禍のなかでの不安な開会式は23日ですが、一部競技の予選は21日に始まります。そうなれば途端に、大会に対する世の中の雰囲気は、変わっていくのではないでしょうか。 

ゴルフの米国メジャー大会での男女の優勝や、大リーグでの大谷選手の活躍に感動や快哉を覚えた人は多いと思います。東京五輪・パラリンピックでも、これまでの五輪やスポーツ大会同様に、新しいヒーロー・ヒロインが数多く生まれるはずです。これまでのメダリストの多くが、地元や日本全国のあこがれとなり、人材育成に貢献し、結果として大きな経済効果をもたらしてきました。それは今回の東京大会も同じになるはずです。

 コロナ禍に苦しめられた今大会だからこそ、アスリートやパラアスリートをリスペクトして、暖かく応援する日本人は増えてくると思います。私は同じ公園で練習されている、パラアスリートの道下美里さんをリスペクトし、一生懸命応援しています。それは大会期間中から大会が終了しても、必ず経済効果として繋がるはずです。

 最後に東京大会以前の8回の五輪を経済の面から見てみると、すべての国で大会開催後の経済成長率は開催前を上回っており、大会開催1年後の株価は8回中7回でプラスになっています。今回の東京大会はコロナ禍で、過去に比べて条件は厳しい中ですが、それでも、経済的にみれば成功を収めると私は考えています。

FM福岡で毎日放送中!「トゥデイズマーケットインフォメーション」

FM福岡で毎日放送中!「トゥデイズマーケットインフォメーション」

最後に私が毎日マーケットについてコメントをしている、FM福岡の放送内容を紹介いたします。

 先週の日本株は大きく下落して、今年度3度目の日経平均27千円台となりました。しかし、週末の米国株市場が最高値を記録したことや、五輪の無観客・東京都の緊急事態宣言等を織り込んだこと、決算を発表した安川電機が市場予想をはるかに上回る好決算だったことなど好材料が揃い、今週の日経平均は600円を超える上げで始まっています。安川電機やファナックなどの設備投資関連株が高く、ソニーなど好業績への期待の高い銘柄も大幅高で始まっています。

 今年後半の金融市場には、2つの大きな課題があります。米国の金融政策の行方と衆院選を控えた日本の政治です。先週までに米金融政策や、東京五輪とコロナの不透明感に加えて、東京都議選を交えた日本の政治不安から下落したことで、2つの大きなリスクはほぼ織り込みました。これまで悲観が先行していた東京市場は、これから日本企業の好業績を評価する明るい動きになりそうです。(7月12日放送分)

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