長期的な資産形成のために有効な手段として、近年注目されているのが「つみたてNISA(積立NISA)」です。今回は、つみたてNISAのメリットとデメリットを説明します。投資を始めたいけれど何をすればよいのかわからない人や、投資のリスクが気になる人は、ぜひ参考にしてください。
つみたてNISAについてわかりやすく解説
つみたてNISAとは、2014年(平成26年)にスタートしたNISA(少額投資非課税制度)の一種です。まずはNISAの意味や仕組みについて理解しておきましょう。
NISAとはどんな制度?
NISAとは、少額の投資で得た利益の税金が免除になる制度です。株式や投資信託などの投資で得た利益には、通常20.315%の税金が課税されます。NISAを利用すれば、一定額までの投資による利益が非課税扱いになります。
NISAが導入された理由
日本の金融資産は預金に偏っており、資金流動性が低いという問題が以前から指摘されています。政府は2013年(平成25年)まで、上場株式の配当金・売却益の税率を約10%に軽減する措置を設け、国民の投資を促進していました。この軽減措置が終了する代わりに始まったのがNISAです。つまり、NISAは国民の投資による資産形成を国が支援する制度です。
NISAの種類
NISAには一般NISA、つみたてNISA、ジュニアNISAの3種類があります。2014年(平成26年)のスタート時には一般NISAだけでした。その後2016年(平成28年)にはジュニアNISAが、2018年(平成30年)にはつみたてNISAが開始しました。それぞれのNISAの概要は次のとおりです。
一般NISA
新規投資額が年間120万円まで、株式や投資信託から得られる利益については、5年間非課税になります。期間終了後も、NISA非課税投資枠で保有している金融商品を新たな非課税投資枠へ移管(ロールオーバー)できるので、最長10年間非課税で運用を継続できます。
つみたてNISA
新規投資額で年間40万円まで、積立型の投資信託(またはETF)で得られる利益については、20年間非課税になります。
ジュニアNISA
0~19歳の未成年者を対象とした制度です。新規投資額で年間80万円まで、株式や投資信託から得られる利益が5年間非課税になります。期間終了後もロールオーバーにより、20歳になるまで非課税で運用を継続できます。
一般NISAとつみたてNISAは併用不可
20歳以上の人がNISAを始める場合、一般NISAもしくはつみたてNISAのいずれかを選択します。NISAには専用口座が必要ですが、一般NISAとつみたてNISAの両方の口座を開設することはできません。年度が変われば切り替えはできますが、同時に両方の運用はできないため、どちらかを選ぶ必要があります。
一般NISAとつみたてNISAの違いは?
一般NISAとつみたてNISAには、非課税枠や非課税期間の違いがあります。最も大きな違いは、対象となる商品や運用方法です。
つみたてNISAは積立専用
一般NISAでは上場株式、投資信託、ETF、REITなど幅広い商品の選択が可能で、一括購入もできます。一方つみたてNISAでは、積立購入型の投資信託などの条件を満たしたものが対象です。つみたてNISAの対象商品は、長期投資に適したものばかりで一括購入はできません。
一般NISAでも、積立型の商品を運用することは可能です。しかし、積立投資をするのであれば、長期間非課税の恩恵を受けられるつみたてNISAの方がおすすめです。
一般NISAとつみたてNISAの主な違い | ||
一般NISA | つみたてNISA | |
年間非課税投資枠 | 120万円 | 40万円 |
非課税期間 | 5年 | 20年 |
対象商品 | 株式、投資信託など | 投資信託が中心 |
運用方法 | 通常買付方式、積立方式 | 積立方式 |
ロールオーバーの可否 | 可 | 不可 |
投資可能期間 | 2023年(令和5年)まで | 2037年(令和19年)まで |
つみたてNISAのメリットって?
毎月コツコツお金を積み立てていく形のつみたてNISAは、投資初心者でも始めやすい方法です。以下、つみたてNISAのメリットを具体的に説明します。
運用益・分配金が20年間非課税
投資信託の分配金や売却益には、通常20.315%の税金がかかります。しかし、つみたてNISAで運用する投資信託については年間40万円を限度に、20年間は税金がかかりません。つみたてNISAによる投資信託の購入は、2037年(令和19年)までです。しかし2037年(令和19年)に購入した投資信託も、2056年(令和38年)までの20年間は非課税で保有できます。
金融庁が定めた条件をクリアした商品が対象
つみたてNISAで運用できるのは、「毎月分配型でない」「販売手数料0円」「国内株のインデックス投信の場合は信託報酬0.5%以下」などの条件をクリアした投資信託・ETFのみです。損をしにくい低リスクの商品の中から運用商品を選べるので、初心者でも安心して投資できます。
買付のタイミングを悩まずに済む
投資をするとなると、売り買いのタイミングに悩んでしまうでしょう。高いときに買ってしまったり、安いときに売ってしまったりすれば後悔することもあります。つみたてNISAでは、決まったタイミングで自動的に買付を行います。そのため、タイミングに悩むこともなく、余計な手間もかかりません。
価格変動リスクを抑えられる
つみたてNISAでは、毎月一定額の投資信託を買い付けます。価格が安いときには多く、高いときには少なく購入するため、ドル・コスト平均法により価格変動リスクを抑える効果があります。
低コストで投資ができる
投資信託の運用では購入時に販売手数料がかかるほか、保有期間中は運用会社に払う信託報酬が発生します。利益が出ても、コストの分目減りしてしまうということです。この点つみたてNISAの対象商品は、販売手数料が無料で信託報酬も一定の基準以下なので、低コストで運用できます。
いつでも換金可能
つみたてNISAは長期積立を前提とした制度ですが、途中で解約することも可能です。投資に関して税制優遇が受けられる制度には、iDeCo(個人型確定拠出年金)もあります。しかし、iDeCoには60歳まで引き出せないというデメリットがあります。いつでも換金できるNISAなら、急に現金が必要になったときにも安心です。
つみたてNISAを始める前に注意したいデメリット
さまざまなメリットがあるつみたてNISAですが、デメリットについても知っておく必要があります。つみたてNISAを始める前には、次のような点に注意しておきましょう。
元本割れのリスクがある
NISAでは金融庁が厳選した投資信託を購入できますが、元本が保証されているわけではありません。投資である以上、元本割れするリスクがあることを認識しておきましょう。
スポット購入ができない
つみたてNISAでは、月1回などの決まったタイミングで投資信託を購入できます。しかし、自分の好きなタイミングで購入するスポット購入ができません。欲しい銘柄を価格が安いときにまとめて購入することはできない点が、デメリットといえます。
毎月の積立額に上限がある
つみたてNISAの年間の非課税枠は40万円となっているため、1ヶ月の積立額の上限は3万3,333円です。毎月もっと多くの金額を投資に回したい場合でも、NISAでは月々の上限額を超える積立はできません。
対象商品が限定されている
つみたてNISAで運用できる投資信託は、金融庁の定める条件をクリアしたものとされており、2021年(令和3年)5月現在、対象商品の数は約200本です。金融機関によって取り扱いしている商品の数が異なるため、選べる商品が少ないと感じることもあります。
損益通算や損失の繰越控除は不可
つみたてNISAでは利益が出た場合には税金が抑えられますが、損失が出た場合の税制優遇はありません。他の投資の利益と損益通算したり、翌年以降に損失を繰越することは不可能です。
他の口座の金融商品をNISA口座に移せない
NISA口座以外で、既に保有している金融商品をNISA口座に移すことは不可能です。つみたてNISAで運用する商品は、NISA口座開設後に新たに購入する必要があります。
非課税枠の再利用や繰越はできない
つみたてNISAで購入した商品を売却して手放しても、非課税枠を再利用することは不可能です。年間40万円に届かなかった部分を翌年に繰り越すこともできません。
つみたてNISAがおすすめな人とは
つみたてNISAのメリットやデメリットについて説明してきました。それでは、つみたてNISAはどのような人に向いているのでしょうか?以下、つみたてNISAがおすすめな人の特徴について説明します。
投資経験が少ない初心者
これから投資を始めたい人や、投資の経験があまりない人に、つみたてNISAはおすすめです。つみたてNISAでは、金融庁が厳選した投資信託・ETFの中から運用商品を選べます。そのため、銘柄選びに自信がない投資初心者でも安心して投資を始められるでしょう。
投資したいけれどまとまった資金がない人
投資するとなると、資金が必要と考える人も多いでしょう。毎月コツコツとお金を積み立てるつみたてNISAでは、月1000円程度の少額から投資ができます。まとまった資金がなくても、つみたてNISAなら気軽に投資にチャレンジできます。
長期的な資産形成をしたい人
つみたてNISAでは、長期間にわたって着実に資産形成ができます。iDeCoのような年齢制限もなく、いつからでも始められます。老後資金など将来必要になるお金を少しずつ貯めたい人は、つみたてNISAを活用するとよいでしょう。
まとめ
資産形成のためには貯蓄だけでなく投資を組み合わせるのが有効です。つみたてNISAなら税金や手数料を気にせずに、効率よくお金を運用できます。
西日本シティ銀行でもつみたてNISAの口座開設が可能です。つみたてNISAを始めたい人は、西日本シティ銀行アプリから申し込みをするか、最寄りの店舗窓口まで相談しに行くとよいでしょう。
- つみたてNISA
森本由紀
AFP(日本FP協会認定)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、行政書士、夫婦カウンセラー
大学卒業後、複数の法律事務所に勤務。30代で結婚、出産した後、5年間の専業主婦経験を経て仕事復帰。現在はAFP、行政書士、夫婦カウンセラーとして活動中。夫婦問題に悩む幅広い世代の男女にカウンセリングを行っており、離婚を考える人には手続きのサポート、生活設計や子育てについてのアドバイス、自分らしい生き方を見つけるコーチングを行っている。