インタビュー

福岡の老舗畳屋4代目(畳屋ラッパー)に「畳」の作り方や効果、幼児発達への影響をインタビューしました。

畳

奈良時代から長きに渡り伝わる日本の文化「畳」

通気性や調湿機能、日本の四季にフィットした機能のほか、畳ならではの温かみと肌触り、ほのかに香るい草の匂いに癒される人も多いのではないでしょうか?

最近はフローリングの間取りが多くなっているようですが、日本固有の畳のことって意外に知らないことに気づき、福岡県朝倉市で116年続く徳田畳襖店四代目の徳田直弘さんに畳のことを伺ってみました。

徳田直弘さんは、平日は畳職人でありながら、福岡県住みます芸人の畳屋ラッパーとしてアーティスト活動もされています。「畳で日本を元気にする」がコンセプトの徳田さんに、畳について言葉を紡いでいただきました。発達や発育支援専門家山野井恵摩先生から得たという「赤ちゃんの運動発達に関わる畳の効果など」の耳寄りな情報も教えていただきました。

畳の部位は何と呼ぶのですか?

――基本的なところからですが、畳はどのように形成されているのですか?

「畳」は、大きく分けると、畳の表面のところを畳表(たたみおもて=ゴザ)、その中は畳床(たたみどこ=土台になる部分)、両端の布の部分を畳縁(たたみべり=端の布地部分)と呼び、この3つの部位でできています。

畳表の素材は主に天然い草、和紙、樹脂の3種類です。

・天然い草は、室内の湿度調整、消臭効果、防炎などの特徴があります。そして、やっぱり畳の香りが心地よいです!

・和紙は、機械漉き和紙をこより状にして表面コーティングされているため、日焼けしにくく、キズや汚れにも強いです。また瞬間強度がい草の3倍ほどあります。

・樹脂は、ポリプロピレンを使っているので、天然い草と似てクッション性もあり、万が一転んだ場合でも衝撃を低減してくれます。

畳床は、稲わらを圧縮したものが昔から伝わる素材です。畳縁は麻や綿、現在では化繊で織られたものが主流で柄や色数も豊富です。今は自由に施工可能ですが、身分によって畳縁の利用が制限された時代もあったそうです。

――畳にはサイズや種類が違うものがあるようですが?

そうですね。地域ごとに規格があります。

当店では、
本間(ほんけん=6尺3寸:191cm×95.5cm)
六一(ろくいち=6尺1寸:185cm×92.5cm)
五八(ごはち=5尺8寸:176cm×88cm)
が基本の規格です。本間が30年以上前の住宅で多くて、規格の中で1番大きいです。五八が一番小さく、その中間が六一になります。最近は全国的に五八が主流ですよ。

40㎝が5㎝に!だから防音性や耐熱性に優れている

――畳はどのように作られるのですか?

新調(畳床から作る施工)だと、部屋を採寸し、畳床を寸法通りに作るところからスタートします。近年では稲わら畳床以外の新素材も増えています。

今の稲わら畳床は機械で圧縮縫いができますが、昔は全て手縫い。職人さんが手と足で40cmほど交互に束ねた稲わらを針と糸で5cmほどまでに硬く縫っていました。わら床の重さは25kg前後になり、しっかりと目が詰まっているので丈夫でいて、防音性や耐熱性に優れています。

畳 採寸

畳表は経糸(たていと)に麻や綿を。緯糸(よこいと)にい草を使い、一般的な織物のように作っていきます。それから畳表も丁寧に採寸し、畳床に畳表を被せ、弛まないように張って縫っていきます。

畳床と畳表の端を切って調整したら畳縁を縫い付け、再度採寸して完成です。

何より大切なのは採寸

――畳を作る時に一番気を配るところはどこですか?

やはり採寸ですね。規格によって変わりますし、あまり知られていませんが、畳は一枚一枚少しずつ大きさが違いますので、例えば北側にある畳を南側に敷き込もうと思っても、入らなかったり隙間もできたりして、収まらなくなります。

調湿、保温、弾力性、リラックス、消臭、吸音効果などなど機能満載の畳

――畳の特徴を教えてください。

畳は畳床と畳表の性質が相まって相乗効果となっているのですが、稲わらの畳床には吸湿放湿性に優れていて、つまり空気を状況に合わせてコントロールしてくれるんです。

畳表の原料であるい草も、内部がスポンジ状の繊維になっているので湿気を吸収し、乾燥した時には湿気を放出してゆっくりと呼吸しているように湿度の調整を補助してくれます。

またフカフカと弾力性があって肌触りもよく、天然のい草の香りはリラックス効果と消臭効果もあります。

それに音を吸収してくれるという効果もあるんです!

畳替えは、裏返し3~5年 表替え7~10年 新調15~20年

――家の畳の替えどきって、いつ頃でしょうか?

畳も使っていると傷んできますので定期的なメンテナンスが必要です。畳替えには3種類あります。

一つ目は全てゼロベースから作る「新調」、
二つ目は畳床はそのままで畳縁と畳表を新品に替える「表替え」、
三つ目は畳縁を外して畳表だけをひっくり返して(日焼けしていない方を使う)畳床に再度縫い付け「裏返し」です。

替えどきは 裏返しは3~5年 表替えは7~10年 新調は15~20年が目安です。ささくれや汚れでも判断して頂きたいですね。あと新しくしたい!と思ったら極端な話、1ヶ月後でも良いと思います(笑)

――家庭でできるお手入れ方法を教えていただけますか?

日々の手入れの一番は窓を開けて座敷ほうきでサッと掃除することです。畳表に優しく、畳の目に沿って掃いていくことでホコリを掻き出してくれます。掃除機の場合も畳の目に沿ってゆっくりとかけてください。拭き掃除は必ず「乾拭き」でお願いします。どうしても水拭きをしたいということでしたら硬く絞って畳の目に沿って拭いてください。

畳にはダニが多い?

お悩みの一つとして、畳にはダニが多い!と聞きますが、じつは間違いです!

温度と湿度が適度なところには場所問わず発生します。また発生源が、タンス裏やクッション、ぬいぐるみなどの可能性も。

本当は年に数回、晴れた日に外で畳干しをすればカビ対策にも効果的ですが、現実的に難しいと思うので、フローリングの部屋同様、掃除機や座敷ほうきでこまめな掃除をお願いします。

梅雨時期はエアコンのドライ運転、除湿機で余分な湿気をとってあげると、より良いですね。

赤ちゃんにも優しい畳生活

――赤ちゃんの運動発達に畳が一役買っているとのことですが。

2、3年前に赤ちゃんが転倒したときに頭を保護するリュックサックができたというニュースを見たんです。

その商品はフローリングなどの部屋で滑って、ひっくり返ったときのヘッドガードということでした。

畳からフローリングに変わったように、生活環境の変化が赤ちゃんの発育にも関係しているのか疑問に思う中、発達や発育支援の専門家山野井恵摩先生にお尋ねしたところ、赤ちゃんの成長過程で「畳」は運動発達を助けるのに大きな役割を果たすことがわかったんです。

ハイハイ時期

重要なのは、特にハイハイ期。畳の上で適度な摩擦があり運動量が増えます。畳表の織り目や畳縁は手の指をしっかり開いて使うことができ手、指の筋力や体幹が発達します。

次に、つかまり立ち期では、畳は赤ちゃんが転倒しても弾力性があるのでクッションとなり、つかまり立ちをする際の膝への負担も軽減されます。畳表の織り目がストッパーとなって足がふん張りやすくなります。

畳のある生活って子育てにも良い環境なんだと改めて納得しました。赤ちゃんも自然にトレーニングができるんです。赤ちゃんだけでなくシニアの方にも畳は優しく日常生活の中で安全性が高いと思います。

最近、畳で寝たい!和室を気軽に作りたい!というお声が多いです。使いたいときにパッと出せる三つ折り式で、約3.4kgしかないシングルサイズの国産畳(税込13,890円)も販売しています。気になる方はお問い合わせ下さい!

い草生産量の98%が熊本県八代市※

                ※農林水産省特定作物統計調査平成28年度

――徳田さんはい草収穫のお手伝いに行かれているそうですね。

はい。2013年に初めて行きました。それから毎年、足を運んでいます。2016年から刈取り作業のお手伝いにも。畳の材料となるい草がどんな風に作られるのか、畳表の実際の作業工程も知りたくて、い草生産量、農家の数も※全国一位、約98%を占めている熊本県八代市に行ったのがきっかけです。そのほかに福岡や佐賀、沖縄のい草の産地にも行っていますよ。

い草は2月に植え付けをして、成長時期は1日に4~6センチ伸びるので倒れないように網掛けをし、成長ごとに網の高さを調整し100~150センチくらいになります。

収穫時期は6月末から7月くらいの深夜3時過ぎから作業開始します。梅雨の時期でジメジメするし、暑いので汗だくになります。収穫されたい草は泥染めをして約16時間乾燥させます。

泥染めは、刈り取ったい草を乾燥から守るための昔から続く工程です。天然染土での泥染めで光沢や強度、い草の香りが生まれます。

い草農家の想いを届ける

産地に行って収穫や畳表になるまでを体験したり教えてもらったりするとい草農家さんのい草への愛情や想いなどを肌で感じることができて、畳替え希望のお客様にもストーリーを届けることができます。収穫以外にも、年間通してたくさんの工程があるので、ちゃんと本物を知って、自分の言葉でもっと伝えられるようになりたいです。

徳田直弘さん

徳田直弘さん 株式会社 徳田畳襖店 専務取締役・4代目

高校卒業後半導体関連メーカーに就職。高校の時から好きだった音楽を本業にとメーカーを退社し、音楽学校、アルバイト、芸能活動を並行する生活がスタート。当時は衰退している畳業界に興味がなかったが音楽学校の恩師から「畳の歌を作って畳業界を盛り上げる人になったら」という助言を受け、畳の歌を作り話題に。2013年、家業の4代目として畳業界へ。平日は畳職人、週末は畳屋ラッパー、MC TATAMIとして活動、2019年には吉本興業株式会社に所属。畳の魅力、新しい可能性をどう伝えるか、どう提供するかをテーマに畳業界を盛り上げるために日々力を注いでいる。
■株式会社 徳田畳襖店 https://www.tokuda-tatami.com/

まとめ

素材や、製造工程、呼び名やその特長など知らないことばかりで、日本ならではの「畳」の魅力について改めて知ることができました。最近は外国の人の方がTATAMIの魅力に注目しているとか。日本の気候、風土にマッチした「畳」をもっと住まいに取り入れたいという思いとともに、徳田さんのように自分の得意分野と融合させて、畳業界を盛り上げていこうという取り組みを応援していきたいと思いました。

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