冠婚葬祭は、一般的に大きなお金がかかるタイミングです。特に、結婚など事前に予定されるものは予算を組むことができますが、弔事に関してはそうはいきません。このような突発的な事態に備えるため、冠婚葬祭互助会について知っておきませんか。本記事では、互助会の意味やメリット・デメリットについて解説します。
互助会の仕組みとは?
冠婚葬祭互助会(以下、互助会)はどのように運営されているのでしょうか。その仕組みについてまとめていきます。
少額の互助会費を積み立て、冠婚葬祭の出費に備える制度
冠婚葬祭の費用は、ほとんどの場合が現金の一括清算で支払います。そのため、まとまったお金がないと困ることもあるでしょう。互助会は、会費として月々少額の掛金を積み立てることで、結婚式や葬儀の出費に備えるという仕組みです。
掛金は月々1000円から加入できる互助会が多くなっています。互助会に加入すれば、現金預貯金の準備がない人でも冠婚葬祭の大きな出費に備えることができて安心です。
互助会は生命保険と似ている?
少額ずつ積み立てたお金が大きな保障として還元される仕組みは、生命保険の「相互扶助(助け合い)」と同じです。決定的な違いとしては、「還元されるモノ」が何であるかです。
互助会では「冠婚葬祭に関するサービス提供」が受けられます。積み立てた互助会費から支払われることにより、会場使用費などの自己負担がありません。一方、生命保険では「保険金」「給付金」などの現金が給付されます。
互助会は経済産業省の許可事業である
互助会の運営に関する指導や管理については、経済産業省が執り行っています。そのため、経済産業省の許可のない結婚式場や葬儀場が、勝手に互助会を設立し運営することは制度上できません。
割賦販売法により掛金の1/2が保証される
前払月掛金(毎月の互助会費)の1/2は互助会の運営などに使用されますが、残りの1/2は、経済産業省の指定する保証会社などで保全されています。これは、消費者保護のための割賦販売法という法律で定められた「前受金保全」という仕組みで、積み立てた掛金の1/2を保証してもらえます。
互助会に加入する目的
少額で互助会費を積み立てていくという仕組みがわかったら、次は加入する目的について確認しておきましょう。
結婚式や葬儀費用の備え
互助会に加入する最大の目的は、冠婚葬祭時の備えです。少額の積立を行うことで、大きな出費が発生するタイミングを安心して迎えられます。なお、一般的な互助会では、家族の中で誰か一人でも加入していれば、子どもや親の冠婚葬祭にも利用できます。
通過儀礼にかかる費用の備え
互助会は結婚式や葬儀以外に、七五三や成人式などの通過儀礼でも利用可能です。会員本人だけに及ぶサービスではなく、家族全員で利用できる点も互助会に加入する目的と言えるでしょう。
互助会のメリット・デメリット
ここからは、互助会のメリットとデメリットを解説していきます。
互助会のメリット
メリット1:少ない負担で大きな出費に備えられる
互助会のメリットは、少額の積み立てによって大きな出費への安心感を得られることです。十分な現金預貯金が手元にない場合でも、月々1000円程度から積み立てておくことで、結婚式や突然の葬儀に備えられます。
メリット2:一般利用よりサービスが優遇されている
互助会会員が冠婚葬祭を利用する場合、会員以外の人が利用するよりも豪華なサービスを、通常価格より安く受けられます。ただ大きな出費に備えるという目的だけでなく、よいサービスをお得に受けられるのは大きなメリットです。
メリット3:加入期間が短くても利用できる
互助会に加入して年月が浅い場合でも、冠婚葬祭時のサービス提供を受けることができます。その際、加入時に決めた満額に満たない部分の差額を払うことになりますが、それでも一般利用よりは安く利用できます。
メリット4:手続きがワンストップで完了する
互助会を利用した冠婚葬祭では、加盟している関連企業と連携したサービスを受けられるため、煩雑な手続きが不要です。葬祭場の確保や、通夜などの参列者への飲食の提供、返礼品の注文・納品などをワンストップで行うことができます。
特に弔事は急に訪れるので、事前にあれこれと手配や準備をしておくことができません。悲しみに暮れている中で、さまざまな手配を行うのは心身ともに大変でしょう。互助会を利用することで手続きがスムーズになり、負担の軽減に繋がります。
メリット5:離れて暮らす家族や転勤した場合も対象となる
互助会は同居の家族に対して適用されるのが基本ですが、離れて暮らす家族が利用できる互助会もあります。また、提携している互助会同士が連携していれば、転勤しても現地の互助会にて継続できる場合があります。実家を離れて暮らしている人や、転勤の多い人にとっては大きなメリットになるでしょう。
メリット6:会員のための特典が受けられる
互助会を実施している団体の関連会社などでは、会員が受けられる特典を用意している場合があります。例えば、飲食店で利用できる割引制度や、関連する企業の宿泊優待などです。加入を検討する際は、冠婚葬祭以外にどのようなサービスを利用できるのかを調べておくのがおすすめです。
互助会のデメリット
ここまで紹介した通り、互助会は便利で役に立つ制度です。ただし、利用前に知っておくべきデメリットもあります。
デメリット1:使い方次第で手出しが必要となる場合がある
互助会は、少額の会費の積み立てで大きな備えができるとお伝えしました。しかし、場合によっては互助会から受けられるサービスだけでは足りないことがあり、その場合には手出しをして清算をする必要があります。
デメリット2:細かなバリエーションに対応していない
互助会を利用して冠婚葬祭の行事を行う場合、細かなバリエーションを選ぶことができないケースが多いです。多くの互助会では3パターン程度があらかじめ準備されており、その中から選んで利用するという仕組みとなっています。
そのため、価格帯や内容の細かな追加・変更が効かず、希望通りの葬儀ができない可能性もあります。
デメリット3:現金での還元はない
互助会は、あくまで冠婚葬祭時にサービスの提供料を清算するのが目的です。そのため長く互助会に加入して掛金を積み立てたとしても、配当金などの名目でお金が返ってくることはありません。
また、途中解約では手数料を差し引かれた残りの金額しか戻ってきません。解約した場合も、それまでに払い込んだ金額の全てが戻ってくるわけではありませんので、その点も注意しておきましょう。
互助会に関するまとめ
互助会に加入すると、少額の積み立てによって万が一の出費への安心感が得られます。また、家族の誰か一人でも加入していれば全員が利用できるのもメリットです。互助会ごとにさまざまな特徴がありますが、どれも経済産業省の管理のもと、安心したサービス提供を行っています。特に突然の葬儀に備えるために、互助会の加入を検討してみてはいかがでしょうか。
- 冠婚葬祭
大野翠
芙蓉宅建FPオフィス代表、FP技能士センター正会員
金融業界歴10年目、お金と不動産の専門家。生命保険、損害保険、各種金融商品の販売を一切行わない「完全独立系FP」として、プロの立場から公平かつ根拠のしっかりしたコンサルティングを開催している。