withコロナ時代の妊活|施設も患者さまも十分に感染症対策を講じていれば、怖がる必要はありません

Go!Go!ワンク編集部

|
2020年10月1日 (木)

これから始まるwithコロナ時代。国が提言する「新しい生活様式」を実際の生活やライフスタイルに取り込んでいく中で、これまでの何を変えるべきで、何を変えなくてもよいのか、大事な決断で選択に迷うことが少なくありません。

妊活もその一つです。新型コロナウイルス新規陽性者の再拡大が収束に転じようとしている今も、迷いの中にいるカップルは少なくないようです。今回は、JISART(日本生殖補助医療標準化機関)の理事長も務める蔵本ウイメンズクリニックの蔵本院長に、現在の見解をお聞きするとともに、安心して妊活に専念できる取り組み方についてアドバイスをいただきます。

■Profile

医療法人 蔵本ウイメンズクリニック

蔵本 武志(くらもと・たけし)院長

1979年 久留米大学医学部卒業、同年山口大学医学部産科婦人科学教室入局
1985年 山口大学大学院修了、山口県立中央病院産婦人科副部長
1988年 済生会下関総合病院産婦人科部長
1990年 オーストラリアPIVETメディカルセンターへ体外受精を中心とした不妊治療研修のために留学。その他、世界各国の体外受精センター15施設を見学し、研修を受ける。
1995年 医療法人 蔵本ウイメンズクリニック開院

医学博士、日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医、母体保護法指定医師、JISART(日本生殖補助医療標準化機関)理事長、日本生殖医学会代議員、日本受精着床学会理事、日本不妊カウンセリング学会監事、日本IVF学会常務理事、福岡生殖医学懇話会代表世話人、山口大学大学院医学系研究科非常勤講師、久留米大学医学部臨床教授

新型コロナウイルス感染症の妊婦や胎児への影響は?

新型コロナウイルス感染症の妊婦や胎児への影響

― 今年4月、「日本生殖医学会」が「新型コロナウイルス感染症(COVID‐19)の国内での急速な拡大の危険性がなくなるまで、あるいは妊娠時に使用できる予防薬や治療薬が開発されるまで、不妊治療の延期を推奨する」と声明を出したことで、妊活中の患者さまから「しばらく不妊治療を受けられないのか」といった不安と焦りの気持ちを訴えられる方々が相次いだとお聞きしています。

蔵本: そうですね、ただし「日本生殖医学会」の声明は、不妊治療を禁止するものではなく、「不妊治療の延期も選択肢として患者さまに提示することを推奨する」という表現でした。

数はわかりませんが、実際、不妊治療の延期をした施設もあると伺っています。

しかし、その後に発表された「日本産科婦人科学会」などの3学会は、「日本生殖医学会」の声明ポリシーを尊重はするが、都道府県と患者さま毎の個別対応が必要であるとしています。

― 実際に新型コロナウイルス感染によって妊婦が重症化した、といったケースは起こっているんでしょうか?

蔵本: そうした心配に対しては、厚生労働省が迅速に対応されていて、4月に作成された「妊娠中の女性の新型コロナウイルス感染対策のリーフレット」の中で、「妊娠後期に新型コロナウイルスに感染したとしても経過や重症度は妊娠していない方と変わらない」としています。厚生労働省も妊娠の延期は勧めていません。

JISART(日本生殖補助医療標準化機関)としても、感染拡大の状況と院内感染に十分な注意を払い、患者さまにしっかりと説明した上で、不妊治療を適切に行っていくという考え方を示しました。それに対して患者さまからは「新型コロナウイルス感染症は怖いが、JISARTの考え方に基づいて継続して治療を受けることができ安心した」という声をたくさんいただきました。

― 不妊治療を行う患者数は相当数減少した一方で、産科の患者数は減っていないそうですね。

蔵本: そうなんです。自然妊娠に慎重論は起こっていないのに、不妊治療による妊娠が取り沙汰されるのは矛盾を感じるところです。

― いずれにしろ過度な心配はいらないということですね。

蔵本: 胎児の異常や死産流産を起こしやすいという報告もありません。また、昨年12月に武漢で原因不明の肺炎患者が発生してから計算すると、10カ月が過ぎようとしています。当時、妊娠したカップルの赤ちゃんが世界中で誕生しているわけですが、新型コロナウイルス感染による催奇形性が上昇したという報告はありません。おっしゃる通り、これから世界中のデータが集約されていくはずですので、遠からずその報告も行われると思われます。

妊娠を延期する最大のリスクは、卵子の老化。それはコロナリスクの比ではないかもしれません

不妊症とは
既婚女性の年齢別の不妊割合

― 現在、蔵本ウイメンズクリニックでは不妊治療についてどういった対応をしているのでしょうか?

蔵本: 現在、わが国で体外受精などの生殖補助医療を受けておられる患者さまの多くは40歳前後の比較的年齢の高い方々であり、時間との闘いの中で治療を受けておられます。この感染症が収束するまで、年単位の期間を要することが予想されていますから、収束を待っていては、妊娠率がさらに低下していくことは避けられません。これがもっとも大きな問題だと考えています。

そのため、当院の方針として、現在の状況を十分に説明し、治療の延期も選択肢の一つとしてお話しするとともに、患者さま及び職員の感染に十分な配慮をし、また福岡の感染状況に常に気を配りながら、妊娠治療を希望される方には体外受精などの不妊治療を行っております。

― 感染対策として、具体的にどのようなことを行っていますか?

蔵本: まず来院を控えていただいているのが、37.5℃ 以上の発熱、風邪のような症状、激しい咳、全身の倦怠感、急な味覚・嗅覚異常等の新型コロナ感染ウイルス感染症を疑う症状のある方や、新型コロナウイルス感染症を発症した方と濃厚接触した方です。

また、来院された患者さまには体温測定、マスクの着用、十分な手洗いや指手のアルコール消毒をしていただいています。

― クリニック内の消毒などはどうですか?

蔵本: ドアノブエレベーター、トイレなど頻回に消毒していますし、室内換気を心がけています。それと、スタッフの健康チェックとマスク着用義務、手洗いなども励行しています。

診察室は、患者さまとドクターの間をアクリル板で仕切っています。双方がマスクをしていれば、しっかりとお話もできます。

― 完全予約制にしている理由は何ですか?

蔵本: 待ち時間を短くするための対策です。待合室での密も防げます。車でお越しの方には、診察が始まるまで車中でお待ちいただいています。お子さまや夫同伴での来院も控えていただいています。

― それでも万が一、妊娠中に新型コロナ感染ウイルス感染症に感染したら、と心配する気持ちも分かります。症例はあるのでしょうか?

蔵本: 「Lancet」という海外の学術誌による報告(2月12日付)では、武漢市内で妊娠後期に新型コロナウイルス感染症にかかった妊婦9例の解析がなされています。これによると、経過や重症度は非妊婦と変わらず、子宮内感染症は見られなかったということです。また、胎盤病理解析を行った3例で母子感染は認められなかったことが報告されています。

ただ、妊娠末期には子宮が大きくなって肺を圧迫しますので、新型コロナ感染ウイルスで肺炎を起こした場合は気をつける必要がありますね。当院では、患者さまに対して健康指導や感染対策指導も行っています。

― これまで毎月開催していた説明会などの集団活動は中止されていますが、説明だけでも聞きたいという患者さまにはどう対応していますか?

蔵本: 情報はホームページで発信したり、メール配信したりしています。また、個別説明会(※)は変わらず実施しています。お一人1時間ほどお取りできます。ご利用ください。また、近い将来はWebを用いた説明会を検討しています。

(※)1500円。(ARTのパンフレット代込み)

「コロナうつ」「不妊うつ」も大敵。
散歩など小さな楽しみで、心の部屋も換気を心がけて

コロナうつ、不妊うつは大敵

― 不妊治療中は、期待と不安の乱高下で軽度の抑うつ状態を引き起こす方も少なくないと聞きます。「コロナうつ」という言葉もまだまだ生活の隣り合わせにあります。withコロナ時代にメンタル面の健康を大切にしながら妊活するポイントがあれば教えてください。

蔵本: 不妊治療中は、頭のことは赤ちゃんのことでいっぱいになりがちです。でも、人間は緊張の糸が張って、余裕がなくなってくると、ストレス耐性がレベルダウンし、身体にも悪影響を及ぼします。時々、緊張の糸をゆるめてあげましょう。

そのよい方法は、短くてもよいから不妊治療のことを忘れる時間を持つことです。ソーシャルディスタンスに留意しながら散歩をするのもよし、買い物に行くのもよし。家の中に閉じこもらず、外に出たほうがリフレッシュできるようです。

当院では公認心理士によるメンタルカウンセリングも行っています。心の専門家に気持ちを聞いてもらうのも一つの方法です。

妊活カップルの家計に朗報!不妊治療助成の年齢要件が緩和

― 新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、不妊治療の助成金を受けられる年齢要件が緩和されました。家計が打撃を受けている最中ですから、このような対応はありがたいですね。

蔵本: 特定不妊治療(体外受精及び顕微授精)を受けている夫婦が、治療の延期を余儀なくされることを想定して、「治療期間初日」の妻の年齢が43歳未満から44歳未満に1歳引き上げられました。また、治療の通算回数もこれまでは「初回助成時の治療期間初日」の妻の年齢が40歳未満は6回、40歳以上になると3回だったのですが、41歳未満まで通算回数6回となりました。いずれも時限的な措置です。

ただ、国も少子化対策の拡充として不妊治療の助成額の引き上げや所得制限の見直しが

課題として上がっていますので、今後の動向を注視しています。

― 最後に読者に向けて、メッセージをいただけますか?

蔵本先生からのメッセージ

蔵本: 不妊の原因にはいくつかの要素が重なり合うものですが、その中で最大のファクターが女性の年齢です。年齢が上がるにつれて卵巣機能が衰え、卵子が老化します。卵子の質が落ちると、卵子や受精卵の染色体異常の率が上がり、妊娠率が低下して流産率も高まります。新型コロナの影響よりこの方が心配です。施設と患者さまが十分に感染症対策を取り、これまで通りに治療に取り組んでいただきたいと思います。

タイムラプスシネマトグラフィー
タイムラプスのメリット

インタビュアープロフィール

ライター吉田さん

吉田 真理子
コピーライター

宮崎市出身。福岡高校、福岡教育大学卒業後、印刷会社に新卒入社。同社出版企画室で書籍・雑誌の校正業務に携わる。その後、出版社への転職を経て、コピーライター・編集ライターとして独立。現在に至る。趣味は、文章の間違い探しとダンス。

タグ
  • 妊娠
  • 出産