LCCM住宅とは?メリットとデメリット、利用できる制度などを解説
地球環境だけでなくお財布にも優しく、一年中過ごしやすい家づくりをしたい人に今注目を集めているのが、LCCM住宅です。LCCM住宅は近年生まれた新しい住宅性能の基準の一つで、従来のZEH住宅を越える基準になっています。今回はLCCM住宅について、基本から条件などを解説するので、ぜひ参考にしてください。
LCCM住宅とは?基本知識を解説

LCCM住宅は、「ライフ・サイクル・カーボン・マイナス」の頭文字を取った言葉です。住宅性能の基準を指し示す制度の一つで、その名のとおり工事や生活のなかで生まれる二酸化炭素の排出量をマイナスにすることを目指した基準になっています。
太陽光発電などの再生可能エネルギーの利用はもちろん、LCCM住宅では建設段階から二酸化炭素の排出量を抑えているのが特徴です。
LCCM住宅として認定される基準
LCCM住宅として認められるのはどのような住宅なのか、その基準を確認しましょう。国土交通省では、LCCM住宅設備推進事業でLCCM住宅を以下1,2のように定義しています。
1.LCCM適合判定ルートの基準を満たしている
LCCM住宅適合判定ルートの基準は、以下のようなものが挙げられます。
LCCM住宅適合判定ルートの基準
- 新築の一戸建て住宅
- 竣工後3年以内の一戸建て住宅
- 強化外皮基準を満たしている住宅
- 一次エネルギー消費量が省エネ基準値から25%削減されている
- ライフサイクルCO2の評価結果が0以下 など
後述するZEH住宅では、一次エネルギー(天然ガスや石油など)の消費量が20%以下です。一方、LCCM住宅の一次エネルギーの消費量は25%以下なので、より二酸化炭素排出量削減に貢献していることがわかります。
2.CASBEE認証ルートの基準を満たしている
LCCM住宅の基準には、LCCM住宅適合判定ルートのほかにCASBEE認証ルートもあります。CASBEEは「建築環境総合性能評価システム」のことで、省エネや環境への負担軽減の効果がある資材を使った建築物を評価するシステムのことです。
CASBEE認証ルートの基準には、以下のような内容が挙げられます。
CASBEE認証ルートの基準
- CASBEEの戸建評価認証の認定書が交付されている
- 設計、竣工後、入居後のいずれかの時点で評価されている
- CASBEE戸建評価員が判定書を作成している など
LCCM住宅で得られる補助金の種類や金額
LCCM住宅購入には、制度によって補助金が用意されています。LCCM住宅整備推進事業とサステナブル建築物等先導事業の二つの制度の補助金の内容と、金額をチェックしていきましょう。
LCCM住宅整備推進事業
LCCM住宅整備推進事業は、設計費や補助対象工事の費用の2分の1まで、最大140万円を補助してくれる制度です。
以下の要件などを満たしていることが、補助の条件です。
LCCM住宅整備推進事業の条件
- ZEH住宅の基準を満たしていること
- 一次エネルギー消費量が25%以下
- ライフサイクルCO2排出が0以下
- CASBEE B+以上、又は長期優良住宅の認定を受けている
- 住宅が土砂災害特別警戒区域等に建てられていない
サステナブル建築物等先導事業(省CO2先導型)
サステナブル建築物等先導事業(省CO2先導型)制度の補助金は、補助対象費用の2分の1、最大200万円です。
サステナブル建築物等先導事業の条件
- ZEH基準、又はZEB基準を満たしていること
- 素材や設備などが二酸化炭素の排出量削減、災害時の時速可能性などに耐えうること
サステナブル建築物等先導事業制度の補助金は応募期間が決められており、いつでも申請できるものではありません。また、毎年決まって募集されるとも限らないため、事前にハウスメーカーや工務店に相談する必要があります。
LCCM住宅とZEH住宅の違い

LCCM住宅と似た住宅の基準に、ZEH住宅があります。地球環境やお財布に優しい住宅基準といえば、ZEH住宅のイメージを持つ人も多いのではないでしょうか。
ここでは、LCCM住宅とZEH住宅にはどのような違いがあるのかを解説します。
ZEH住宅は建設後のエネルギー消費について考慮している
ZEH住宅は、「ゼロ・エネルギー・ハウス」の頭文字を取った言葉です。暮らしのなかで排出される二酸化炭素の排出量を抑え、太陽光発電などでエネルギーを生み出し、年間のエネルギー消費量をゼロ以下にすることを目指した住宅を指します。
太陽光発電などでエネルギーを作るほか、夏は涼しく冬は暖かく、エアコンの使用を最小限に済ませられるような工夫もされています。
LCCM住宅は建設前からのエネルギー消費を考慮している
ZEH住宅が生活のなかのエネルギー消費量に着目しているのに対して、LCCM住宅は工事前の段階からのエネルギー消費量に着目しています。
例えば、国内の木材を使うことで、海外の材料の輸送にかかるエネルギー消費を抑えることが可能です。住宅の基礎部分や壁などにも国産の材料を使った木造住宅が、LCCM住宅では推奨されています。
廃材が出にくい建築方法を用いて、ゴミの量を減らしている点もLCCM住宅の特徴です。
LCCM住宅とはどんな家?メリット・デメリットは?

LCCM住宅とはどのような家なのか、設備や素材などの面からメリットとデメリットを見てみましょう。
LCCM住宅のメリット
国産の木材を使っている
LCCM住宅には、国産の木材が使用されていることが多いです。国産の木材を使うことで、船舶や飛行機による海外からの輸送にかかる二酸化炭素の排出量を抑えられます。また、木材は鉄骨などに比べて、二酸化炭素の排出量を3分の1から4分の1に抑えるはたらきがあるのもメリットです。
基礎における資材の使用を最小限にとどめ、二酸化炭素の排出量が少ない特殊なセメントを使うLCCM住宅もあります。
省エネが叶う設備を取り入れている
LCCM住宅には、効率的に省エネに貢献できる設備が多く取り入れられています。太陽光発電や換気塔などを用い、自然から得られるエネルギーを最大限活用できるようにしている点が特徴です。
大きな窓を設置することで自然に風が入り込みやすくなる、断熱性の高いガラスを使用し日光で日中暖かく過ごせるなどの魅力があります。エアコンなどのエネルギーの消費量を抑えることも、二酸化炭素の排出量の削減に役立ちます。
自然エネルギーを活用できる
屋根に太陽光発電や風力発電などを取り入れることで、効率的に自然のエネルギーを最大限利用できる点もLCCM住宅の特徴です。現在日本では、多くのエネルギーを原子力発電に頼っています。原子力発電は安定して電力を供給できるメリットがある一方、二酸化炭素の排出量が多いのがデメリットです。
地球環境を考えると、再生可能な太陽光や風力などから生まれるエネルギーを活用することが大切になっていきます。
LCCM住宅のデメリット
間取りやコスト面で制限があることも
基礎となる資材を最小限にするためにはある程度間取りの制限があり、理想の間取りを叶えられないかもしれません。開放的なリビングにしたいなど、強いこだわりがある人にはデメリットに感じる可能性があります。
また、国産の材料や最新の再生可能エネルギー設備を取り入れるため、高額になりやすいです。
対応している業者が少ない
LCCM住宅は近年新しく設定された基準のため、対応しているハウスメーカーや工務店などが少ない点もデメリットです。そのため、利用したいハウスメーカー、工務店があってもLCCM住宅に対応していなければ利用できません。
おのずと選択肢が少なくなってしまうので、自分たちの理想の家づくりができるかをよく考える必要があります。
LCCM住宅が注目される理由と背景

地球環境に優しい住宅基準といえばかつてはZEH住宅でしたが、近年はLCCM住宅が注目されています。その理由と、どのような背景があるのかを見ていきましょう。
光熱費を削減できる
LCCM住宅を建てることで、年間の光熱費を削減できます。LCCM住宅では太陽光発電の設備を取り入れるだけでなく、住宅設計が高気密、高断熱になっているため年間を通して過ごしやすいです。
住宅の気密性や断熱性を計測するUA値も、LCCM住宅には一定以上の基準が設けられています。一般的な住宅よりもエアコンの使用を最小限に留められるため、近年高騰している光熱費のカットに役立ちます。
一年を通して快適に過ごせる
気密性、断熱性が高い住宅はエアコンの使用を最小限に抑えられるだけではありません。涼しい風が自然に入ってくる、暖かい日差しが入ってくるなど、年間を通して快適に過ごせるポイントが詰まっています。
また、リビングとトイレ、浴室など、住宅内の場所によって室温が変わりにくい設計になっている点もポイントです。冬場に浴室との温度差でヒートショックを起こしたり、夏場にトイレで熱中症になったりする心配も少なく安心して暮らせます。
地球環境にも優しい
建設段階から排出する二酸化炭素の量に着目したLCCM住宅は、地球環境に優しいという大きな魅力があります。近年温暖化は深刻な問題であり、毎日の暮らしから貢献できるのであれば取り入れたい人も多いのではないでしょうか。
LCCM住宅では国産の素材を使うため、国内の林業を活性化することにもつながります。住宅建設の素材の多くを海外からの輸入に頼っている日本では、国産素材を積極的に使っていくことも大切です。
物価高騰の対策もできる
LCCM住宅には補助金が用意されているため、購入時に役立ちます。太陽光発電設備が備わっているLCCM住宅なら、導入コストもかかりません。
近年、輸送コストの高騰により住宅価格も高くなっていますが、補助金やランニングコストを考えるとLCCM住宅なら検討できるでしょう。購入費や光熱費が浮いた分、教育費を貯金するなどさまざまな選択肢が生まれます。
まとめ
LCCM住宅は、建設前の段階から地球環境に着目しています。従来のZEH住宅よりもさらにエネルギーの消費量を抑え、環境に優しいだけでなく効率的な設備で年間を通して過ごしやすいのが、LCCM住宅の特徴です。
補助金制度も備わっているので、これから住宅の購入を検討している人はぜひLCCM住宅も選択肢に入れてみてください。

古賀 清香
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
広告代理店勤務を経て、フリーライターとして6年以上活動。自身の投資経験をきっかけにFP資格を取得。投資・金融・不動産・ビジネス関連の記事を多数執筆。現在はフリーランスの働き方・生き方に関する情報も発信中。