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社会保険とは?今さら聞けない制度の仕組みについてわかりやすく説明します

社会保険は国が定める社会保障のひとつで、私たちの生活に最も身近な制度です。社会保険の仕組みを知れば日常のさまざまな場面で活用でき、より安心で健康的な生活を営むのに役立ちます。 この記事では社会保険の種類や給付、加入条件などの基礎知識をわかりやすく説明します。

社会保険ってどんな仕組み?

社会保険は社会保障制度を構成する仕組みのひとつです。社会保障制度の概要を以下にまとめました。

社会保障制度とは

「社会保険」「社会福祉」「公的扶助」「保健医療・公衆衛生」の総称です。私たちの生活を守るセーフティネットであり、すべての人が健康で文化的な生活を営めることを目的としています。

社会保険

私たちの生活に最も身近な制度で、万が一のリスクに対応するための公的保険です。備えられるリスクには、病気・ケガ・失業・貧困・老齢・死亡・出産などがあります。これらの理由で生活が困窮した場合に、一定の給付をするのが社会保険の主な役割です。

財源は主に加入者や事業主が納付する保険料で、国や地方自治体も一部負担しています。相互扶助の精神に基づいて、国民ひとりひとりが保険料を負担して自分を含むその他大勢のリスクに備えます。

社会福祉

障がい者・母子家庭・児童福祉など、ハンディキャップを持つ人が安心して社会生活を営めるように公的な支援をする制度です。保育所や児童手当、公立高校の無償化なども社会福祉に含まれます。

公的扶助

貧困・低所得者などの生活が困窮した人に対して必要最低限の費用を支給する制度です。主な保障として生活保護や生活福祉資金貸付制度があります。

保健医療・公衆衛生

健康で衛生的な生活を維持するための制度です。健康診断や感染症予防対策、公害対策、下水道整備、ペットの保護などがあります。

社会保険制度の種類は5つ

広義での社会保険には以下の5つの種類があるので、ひとつずつ説明していきます。

公的医療保険

病気やケガをしたときに、公的な機関が医療費の一部を負担する制度です。

公的医療保険制度の概要

制度

被保険者

保険者

自己負担割合

傷病手当金

健康保険

(協会けんぽ)

主に中小企業の

会社員とその家族

全国健康保険協会

・就学前乳幼児は2割

・小学生~70歳未満は3割

・70歳以上75歳未満は2割(所得が一定以上の場合は3割)

あり

健康保険

(組合管掌健康保険)

主に大企業の

会社員とその家族

健康保険組合

同上

あり

共済組合

公務員

私学の教職員と

その家族

各種共済組合

同上

あり

国民健康保険

自営業者

フリーター

市区町村

同上

なし

後期高齢者

医療制度

75歳以上の

高齢者

後期高齢者

医療広域連合

1割(所得が一定以上の場合は3割)

なし

出典:厚生労働省「医療保険」をもとに筆者作成

代表的な公的医療保険は、「健康保険」と「国民健康保険」です。どの公的医療保険に加入するかは職業・扶養関係・年齢によって異なり、 受けられる保障や保険者も変わります。

日本は「国民皆保険」によって、国内に住所を有するすべての人が公的医療保険に加入することが義務づけられています。これにより、誰もが日本のどの場所でも必要な治療を受けることが可能です。

公的年金

公的年金制度は老齢・障害・死亡などのリスクに対して必要な給付を行い、その後の生活を社会全体で支える制度です。

公的年金制度の概要

分類

第1号被保険者

第2号被保険者

第3号被保険者

加入する

公的年金

国民年金

厚生年金

国民年金

加入者

自営業者

フリーター

無職の人

第2号・第3号に該当しない配偶者など

会社員

公務員など

第2号被保険者に扶養されている配偶者で年収130万円未満の人

年齢

20歳以上60歳未満

70歳未満

20歳以上60歳未満

月額保険料

1万660円

※2021年度(令和3年)

※全額自己負担

標準月額報酬×18.3%

※2017年(平成29年)9月~

※本人と事業者で折半

保険料の負担はなし

老後に備える

老齢基礎年金

老齢厚生年金

老齢基礎年金

障害が残った場合に受け取れる

障害基礎年金

障害厚生年金

障害基礎年金

遺族が受け取る

遺族基礎年金

または

寡婦年金

遺族厚生年金

遺族基礎年金

出典:厚生労働省「教えて!公的年金制度」をもとに筆者作成

日本では「国民皆年金」によって、国内に住む20歳以上60歳未満の人は公的年金制度への加入が義務づけられています。

年金制度は現役世代が納めた年金保険料を高齢者などへ年金として給付する、世代間での支え合いで成立しています。

公的介護保険

介護が必要な高齢者または特定疾病患者を、社会全体で支える仕組みが公的介護保険制度です。

公的介護保険制度の概要


第1号被保険者

第2号被保険者

対象者

65歳以上の人

40歳から64歳までの公的医療保険の加入者

受給要件

・要介護状態

・要支援状態

要介護、要支援状態が老化に起因する特定疾病の場合に限定

介護保険料の徴収方法

市町村と特別区が徴収

(原則年金からの天引き)

公的医療保険の保険料と一括徴収

徴収開始時期

65歳になった月から

40歳になった月から

※65歳になると自動的に第1号被保険者に切り替わる

出典:厚生労働省「介護保険制度の概要」をもとに筆者作成

介護保険の保険者は市町村(特別区)で、被保険者は65歳以上の人と40歳から64歳までの公的医療保険加入者です。

40歳以上の人は加入が義務づけられており、公的医療保険や年金からの天引きで保険料を納めます。

雇用保険

労働者の失業や再就職に際して必要な支援や給付をする制度です。

雇用保険で受け取れる給付の種類

種類

内容

一般求職者給付

・基本手当(失業手当)

・技能習得手当

・寄宿手当

・高年齢雇用継続基本給付金

・特例一時金

就職促進給付金

・就業促進手当

・求職活動支援費

・移転費

教育訓練給付

・教育訓練給付金

雇用継続給付

・介護休業給付金

・高年齢雇用継続給付金

育児休業給付

・育児休業給付金

出典:ハローワーク「雇用保険制度の概要」をもとに筆者作成

失業手当(失業保険)の受給条件

一般求職者給付の基本手当は「失業手当(失業保険)」とも呼ばれ、失業後から再就職までの生活の安定を図る目的で支給されます。

以下の条件に該当している被保険者が受給対象者です。

  1. 就職の意思と能力はあるが、就業できていない状態であること

  2. 離職日以前の2年間で通算12ヶ月以上雇用保険に加入していること

失業手当の給付手続き

日本全国にあるハローワーク(公共職業安定所)で手続きをします。詳しい手続きの方法は最寄りのハローワークか、ハローワークインターネットサービスで確認してください。

労災保険(労働者災害保険)

勤務または通勤中における傷病などに対してかかった医療費や、休業による損失を補償する制度です。労働者自身やその家族に対して必要な保険給付をします。

労災保険制度の概要

給付の種類

支給事由

給付の内容

特別支給金

療養補償

業務災害・通勤災害による傷病

必要な療養費全額

_

休業補償

労働災害の療養のため休業したとき

休業4日目から1日につき給付基礎日額の60%相当額

休業4日目から1日につき給付基礎日額の20%相当額

障害補償年金

傷病が治ったあとに障害(障害等級1~7級)が残ったとき

障害の程度に応じ、給付基礎日額の313~131日分の年金

障害の程度に応じ、342~159万円

障害補償一時金

傷病が治ったあと、障害(障害等級8~14級)が残ったとき

障害の程度に応じ、給付基礎日額の503~56日分の一時金

障害の程度に応じ、65~8万円

遺族補償年金

労働災害により死亡したとき

遺族の数などに応じ、給付基礎日額の245~153日分の年金

一律300万円

遺族補償一時金

死亡したとき遺族補償年金を受け取る遺族がいないとき

給付基礎日額の1000日分の一時金

一律300万円

葬祭料

労働災害により死亡した人の葬儀を行うとき

31万5,000円に給付基礎日額の30日分を加えた額

_

出典:厚生労働省「各労災保険給付の支給事由と内容について教えてください」をもとに筆者作成

上記以外に「介護補償」「傷病補償」などがあります。

労働者には業務に携わるすべての人が該当するため、パートやアルバイトで働く人も含まれます。自己負担額がゼロになるなど、健康保険よりも手厚い補償を受けられるのが特徴です。

社会保険と雇用保険の違いとは

広義でいうと雇用保険は社会保険に分類されます。社会保険をさらに狭義に分類すると、雇用保険は労働保険に分類されます。

狭義の社会保険と労働保険

狭義の社会保険

狭義

種類

社会保険

健康保険

年金保険

介護保険

労働保険

雇用保険

労災保険

一般的に、医療保険・年金保険・介護保険の3つを狭義の社会保険といいます。会社員の場合は健康保険・厚生年金保険・介護保険です。

介護保険料は健康保険料と一緒に徴収されます。そのため、通常「狭義の社会保険」といえば「健康保険」と「厚生年金保険」を指す傾向があります。

労働保険とは、雇用保険と労災保険(労働者災害補償保険)の2つを合わせた総称です。労働者の雇用や生活を守ることを目的とした国の制度で、厚生労働省が管理・運営をしています。

狭義の社会保険と雇用保険(労働保険)の違いが簡単にわかるように、以下の表にまとめました。

社会保険(狭義)と雇用保険(労働保険)の違い


社会保険(狭義)

雇用保険(労働保険)

加入義務

強制加入

会社に所属し要件を満たすと加入義務が発生する

保険料

労使折半もしくは全額自己負担

労使折半もしくは全額事業主負担

内容

病気やケガの補償


年金の支給


介護サービスの利用

失業・再就職支援


出産・育児


介護


高齢者雇用

社会保険と雇用保険の加入条件の違いを知ろう

狭義の社会保険と雇用保険は、ともに労働者が加入するという点で混同されやすい制度です。加入条件からこれらの違いを解説します。

社会保険の加入条件

社会保険のうち、健康保険の適用を受ける事業所を適用事業所といいます。適用事業所には、強制適用事業所と任意適用事業所があります。

強制適用事業所

  • 事業主や労働者の加入意思

  • 従業員数

  • 事業規模

  • 業種

これらに関係なく社会保険への加入が義務づけられている事業所が、強制適用事業所です。地方公共団体、株式会社などの法人が該当します。個人事業主でも特定の従業員数や業種であれば、強制適用事業所になる場合があります。

任意適用事業所

厚生労働大臣の認可を受けて適用となった事業所です。社会保険に加入するためには、従業員の半数以上が適用事業所になることへの同意が必要です。

従業員の社会保険加入条件

社会保険の適用事業所で以下の条件に該当する従業員は、社会保険への加入対象です。

  1. 従業員数501人以上の企業に勤務している

  2. 週の所定労働時間が20時間以上

  3. 月額賃金が8.8万円以上

  4. 学生ではない

  5. 雇用期間が1年以上

なお従業員数が500人以下の場合は、上記4つの条件に加えて従業員の半数と事業主の同意が必要になります。

雇用保険の加入条件

雇用保険は労働者の生活の安定が目的であることから、狭義の社会保険に比べて従業員の適用範囲が広いのが特徴です。

事業主の加入義務

事業主はひとりでも労働者を雇っていたら雇用保険への加入義務があります。

従業員の雇用保険加入条件

以下の条件にあてはまる従業員(パート・アルバイト含む)は雇用保険に加入する義務があります。

  1. 31日以上の雇用期間が見込める

  2. 週の所定労働時間が20時間以上

  3. 学生ではない

会社の社会保険に入るとどんなメリットがある?

会社の社会保険には、大きく分けて4つのメリットがあります。

会社が保険料を半分負担してくれる

健康保険と厚生年金保険の保険料は「労使折半」で、事業主と労働者で半分ずつ負担します。それに対して国民健康保険と国民年金の保険料は、加入者の全額自己負担です。

扶養の制度がある

会社の社会保険に加入している夫の配偶者(年収130万円以下)には保険料の負担がありません。一方で国民健康保険には扶養の概念がないため、家族全員分の保険料を納付する必要があります。

受け取れる年金額が増える

国民年金の1年間に受け取れる老齢基礎年金は、2021年(令和3年)の時点で78万900円※です。

※40年間未納なしの場合の満額受給額

厚生年金は、この金額に老齢厚生年金を上乗せした額が支給されます。したがって、国民年金のみの人に比べて給付額が増えるのが特徴です。

また被保険者が障害または死亡した場合も同様に、障害厚生年金・遺族厚生年金をそれぞれの基礎年金に上乗せして受給できます。

受け取れる手当が増える

会社の健康保険には、傷病手当と出産手当金の支給があります。一時的に収入が減少する状況下で手当が受け取れるのは、大きなメリットといえるでしょう。

まとめ

社会保険と雇用保険は補償内容や加入条件は大きく変わりますが、私たちの生活を安定させる重要な制度です。

両方とも受給に関する手続きは自分で行う必要があります。給付もれのないように、制度の概要を正しく理解しましょう。


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