子どもが小さいうちは病気にかかりやすく、通院することが多いため、医療費への備えを検討する人もいるでしょう。大人と同じように、子どもも医療保険に加入すべきなのでしょうか。今回は、子どもの医療保険の考え方や利用できる医療費助成制度、保険選びのポイントをお伝えします。
子どもの医療保険には加入すべきか?
子どもの医療保険の必要性を判断するには、子どもの医療費の現状を理解することが大切です。まずは子どもの入院率や医療費について確認しておきましょう。
子どもの入院率はどれくらい?
厚生労働省の「2017年(平成29年)患者調査」によると、人口10万人に対する子どもの受療率(入院)は以下の通りです。
年齢階級 | 人口10万人に対する受療率(入院) |
0歳 | 1,167 |
1~4歳 | 169 |
5~9歳 | 86 |
10~14歳 | 94 |
15~19歳 | 113 |
参考:厚生労働省「2017年(平成29年)患者調査」
0歳は「1,167」と比較的高いものの、1歳以降は大きく低下しており、5歳以降は年齢が上がるほど増加する傾向にあります。60歳を超えると増加幅は大きくなり、65歳以上で「2,734」、75歳以上で「3,997」となります。
この調査結果から、子どもの入院率は他の年代に比べると低いといえます。
子どもが病気になったときの医療費の自己負担は何割?
現役世代(70歳未満)は、医療費の3割を自己負担分として窓口で支払います。子どもの場合、原則として6歳(義務教育就学前)未満は2割、6歳以上は大人と同じく3割負担です。
ただし、多くの自治体では医療費の助成制度があるため、実際には2割よりも少ない負担で済むケースが多いです。また、高額の医療費がかかった場合は、高額療養費制度を利用することで自己負担額の軽減が可能となります。
公的保障だけではカバーしきれない出費もある
子どもの入院率は比較的低く、医療費の自己負担が軽減される仕組みもありますが、公的保障だけではカバーしきれない出費もあります。
たとえば、子どもが入院することになれば、タクシー代などの交通費や食事代などの費用がかかります。付き添いのために親が仕事を休む場合、一時的に収入が減少する可能性もあるでしょう。
子ども向けの医療保険に加入すれば、公的保障でカバーできない出費に備えられます。用意できるお金が少ない場合、子ども向け医療保険の必要性は高いといえるでしょう。
子どもの医療保険の保障内容について
子どもの医療保障を準備する場合、どのような保険に加入すればよいのでしょうか。ここでは、子どもの医療保険の種類とそれぞれの保障内容を説明します。
保険会社や共済組合の医療保険に加入する
保険会社や共済組合では、子ども向けの医療保険を取り扱っています。通常の医療保険と同じく入院給付金や手術給付金が支払われ、先進医療特約を付加することも可能です。
共済組合の医療保険は、入院・手術給付金のほかに重度障害や死亡時の保障も付いているタイプが一般的です。
学資保険に医療特約を付加する
学資保険は教育費を準備するための貯蓄型保険ですが、商品によっては医療特約を付加できます。学資保険の医療特約では、入院給付金や手術給付金が支払われるのが一般的です。医療特約を付加すると保険料が上がり、貯蓄性が下がる点には注意が必要です。
傷害保険に加入する
傷害保険とは、ケガや病気に備えるための保険です。子ども向けの傷害保険に加入すれば、ケガや病気で入院・通院したり、手術を受けたりした場合に給付金が支払われます。
また、子どもが他人にケガをさせたり、物を壊したりした場合に備えて賠償補償を付加することも可能です。
子ども向けの傷害保険は保険会社で加入できますが、学校から案内されるケースもあります。
子ども向け医療費助成制度って何?
子ども向け医療費助成制度とは、子どもが医療機関に入院・通院した際に支払った医療費の一部を自治体が助成する制度です。地域によって助成内容は異なりますが、子どもの医療費の負担軽減が期待できます。
子ども向け医療費助成制度の具体例(東京都の場合)
具体例として、東京都の子ども向け医療費助成制度の内容を確認してみましょう。
乳幼児医療助成制度(マル乳)
都内在住の乳幼児(義務教育就学前)を対象とした医療費助成制度です。
各種健康保険の対象となる医療費の自己負担分が助成されるため、医療費の負担が軽減されます。ただし、健康保険の対象とならない健康診断や予防接種、差額ベッド代などは助成されません。
義務教育就学児医療費の助成(マル子)
都内在住の義務教育就学期にある児童(15歳に達する日以後の最初の3月31日まで)を対象とした医療費助成制度です。
入院については自己負担額、通院は自己負担額から一部負担金(通院1回につき200円)を控除した額が助成されます。
ただし、区市町村によって助成範囲は異なります。また、マル乳と同じく健康保険の対象とならない健康診断や予防接種などは助成されません。
助成範囲に注意する
自治体の医療費助成制度を利用する際は、助成範囲を確認しておくことが大切です。基本的には、各種健康保険の対象となる医療費が助成対象となります。
地域によって助成範囲に差があり、乳幼児のみが助成対象だったり、所得制限が設けられていたりする自治体もあります。住んでいる自治体のホームページなどで、医療費助成制度の内容を調べておきましょう。
結局子どもの医療保険は必要?選ぶポイントやメリット
小さな子どもは医療機関を受診する機会が多いものの、自治体の医療費助成制度を利用すれば医療費の自己負担額は軽減されます。また、子どもの入院率は低いので、医療保険には加入せずに預貯金でカバーするという考え方もあるでしょう。
ただし、子どもに付き添う際の交通費や差額ベッド代、仕事を休むことによる収入減などに備えたい場合は、医療保険に加入するメリットがあります。
子どもの医療保険が必要かは人それぞれで、唯一の正解は存在しません。保障を確保できるメリットと保険料負担が生じるデメリットを比較した上で、加入すべきか判断しましょう。
子ども向け医療保険を選ぶポイント
子ども向け医療保険を選ぶときは、複数の商品を比較し、子どもや家族に合った保障を確保することが大切です。具体的には以下のポイントを基準にするといいでしょう。
保険金額を選ぶ
子ども向け医療保険で、どれくらいの保障を確保しておきたいかを明確にしましょう。医療保険は、入院日額と手術給付金の額をいくらにするかがポイントとなります。
保険ですべてを備えようとすると、保険料が高くなってしまいます。住んでいる自治体の医療費助成制度や預貯金の額を踏まえて、最低限必要な保障を確保することを心掛けましょう。
保険料を比較する
同じような保障内容であっても、保険会社や商品によって保険料は変わります。
保険期間と保険金額が決まったら、現在加入している保険の医療特約を含め、条件を満たす商品を複数ピックアップしましょう。保険料を比較したうえで、なるべく保険料が安い商品を選ぶことが大切です。
一般的には、加入時の年齢が低いほど保険料は安くなります。誕生日が近い場合は、誕生日を迎える前に加入手続きを行いましょう。
保障内容・条件を確認する
候補となる商品が絞られたら、あらためて保障内容や保険金の支払条件を確認しておきましょう。契約前に保険会社の担当者に質問して、疑問点や不明点を解消しておくことが大切です。
まとめ
子どもの医療費は助成を受けられることが多く、自治体によっては医療費が実質無料となる地域もあります。また、公的保障で不足する部分は預貯金でカバーするという考え方もあります。
子ども向け医療保険に加入する前に、まずは住んでいる自治体の医療費助成制度を確認することから始めましょう。
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*保険商品に関するご留意事項について
商号等:株式会社西日本シティ銀行 登録金融機関 福岡財務支局長(登金)第6号
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大西 勝士
AFP、2級FP技能士
会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て、2017年10月より金融ライターとして活動。10年以上の投資経験とFP資格を活かし、複数の金融メディアで執筆中。