IoTテクノロジーを活用した、子どもからお年寄りまで安心して暮らせる街づくり|株式会社otta 山本文和さん

山本佳世

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2021年7月27日 (火)
otta

SNSやアプリが普及して便利な生活が手に入る一方、未成年者を狙った事件や犯罪のニュースを目にする機会が多くなりました。同時に、超高齢化が進むにつれてお年寄りの徘徊問題も深刻化しています。そういった現代社会が抱える問題を、IoTテクノロジーを活用して解決へ導くのが今回ご紹介する『otta』という見守りサービス。『株式会社otta』代表の山本文和さんは、「自分の娘を守りたい、子どもたちが安心して暮らせる地域をつくりたい」という思いから、会社を辞めてこのサービスをスタートしました。

otta山本さん

■プロフィール
株式会社otta 代表取締役社長
山本文和(やまもとふみかず)さん

1977年、山口県生まれ。広島で半導体ロボットエンジニアを務め、その後はソフトウェア系のエンジニアやスマホアプリの開発ディレクターを歴任。2014年に『株式会社 otta』を設立。

安心して暮らせる地域を

――まずは、「otta」の事業内容を教えてください。

山本:子どもや高齢者が安心して暮らせる街を実現するための、地域参加型のタウンセキュリティサービスを展開しています。ビジョンとしては電気やガス、水道のようなインフラとして整備し、安心を提供したいと思っています。

そこで開発したのが、ビーコン端末とアプリを使った「otta」です。これは、子どもの位置情報をスマホで把握できる見守りサービス。小型の端末から発するBluetoothの電波を街中にある“見守りスポット”がキャッチし、アプリを通して保護者の元へ情報を届けるというものです。

otta

――携帯電話を持たせずとも、お子さんの居場所が分かって安心できるんですね。

山本:居場所を探すというより、“学校に着いた”“近所の公園に行った”という移動経路が分かる仕組みになっています。見守りスポットは対象エリアにあるすべての小学校や、通学路にある駅や公園、商店といった場所に設置し、さらに「見守りアプリ」をインストールしたタクシーやスマホを持つ人が“動く見守りスポット”として協力してくれることで、移動経路を詳細に特定することができます。昨年(2020年)の12月にはGPSによる位置記録機能を搭載し、ボイスチャットでスマホと会話ができる防犯ブザー「otta.g」も発売しました。

――どのようにしてこのサービスを考えついたのですか?

山本:サービスの根底にあるのは、「自分の子どもを見守りたい」という思い。起業した当時、私が住んでいた街で子どもの誘拐事件があったんです。その時うちの娘は4歳だったので、身近でそういう事件を見てしまってすごく心配になりました。これから大きくなるにつれて一人で出歩く機会も当然多くなるし、自分の子どもが危険な目に遭わないために何かできないかな…と調べ始めたことがきっかけです。

調べていくうちに、現状あるサービスは何かあった時には役立つものの、何か起きないためには有効でないことが分かりました。「何か起きない環境を作る」という観点で考えついたのが、「otta」のサービスです。

――起業したキッカケや経緯について教えてください。

山本:起業する前までは、広島県の会社でソフトウェア系のエンジニアをしていました。当時は起業するなんて全く思っていなかったんですよ。僕の場合は「起業して何かを始める」ではなく、「何かを始めるために起業する」という順番が当てはまりますね。前職の会社で僕が想い描く見守りサービスが実現できるのであれば、それでよかったんです。

ただ現実的に、そうはできなかった。会社に属していると、例えばトップが変われば会社の方針も変わり、事業が継続できなくなる…なんて話は良く聞きますよね。そういう経験が実際、僕にもありました。「このサービスは絶対にやり遂げたい、失敗してもいいので悔いが残らない状態までやり遂げる環境を作りたい」と思ったので、会社を離れて起業することにしたんです。

――現在は広島県ではなく、福岡市を拠点に活動されているのですか?

山本:起業したのは広島県だったのですが、そこではサービスを実証するフィールドが見つからなかったんです。僕たちのサービスって学校と密接に連携し、端末を子どもたちに配って体験してもらう必要があるのですが、広島県ではその実証実験のフィールド探しに苦戦しました。

そんな時に転機が訪れたんです。広島県でベンチャー大賞を受賞して、スタートアップ都市推進協議会のイベントへ広島県代表として参加する機会がありました。その時、福岡市の高島市長も来られていたので、「福岡市で実証実験させていただけませんか?」とお声かけさせてもらったんです。すると「いいよ」とおっしゃって担当者を紹介していただき、半年後に福岡市の警固小学校で実証実験を無事行うことができました。

福岡市はスタートアップの支援に積極的で、行政だけでなく民間企業や一般市民も新しいものを受け入れやすい土俵があります。福岡に移った方が会社としてスケールすると判断し、4年ほど前に家族も一緒に移ってきました。

――人とのつながりも、今に生かされているんですね。

山本:起業する前後はいろんな場に顔を出すことに積極的になっていました。「イベントで登壇して」「欠員が出たから出席して」と声がかかれば、基本的に断ることはなかったですね。そこから人脈が生まれ、助けてもらえたこともたくさんありました。そういうスタンスでいたことが、今思えば良かったなと思います。

――起業するにあたって苦労したことはありましたか?

山本:そもそも起業しようとは思っておらず、ファイナンスといった知識に乏しかったので資金集めには苦労しましたね。そんな中運良くスポンサーを見つけることができ、日本政策金融公庫が提供する「資本性ローン」を最初に使わせてもらったので、システム開発はスムーズに行えたと思います。

三方よしのビジネススキームが鍵

――昨年には新商品も発売するなど、事業を展開できている要因は何でしょうか?

山本:僕たちのサービスが、みなさんが本当に必要とするものであったからだと思います。もう一つはどこかに負担が偏るものではなく、“三方よし”のビジネススキームであったから。「otta」の端末はエリア内の小学生に無料で配布し、2ヶ月体験した後に無料と有料のサービスを選べるようになっています。行政からは一切予算はいただいていません。つまり、利用者は無料で使え、行政は無料で市民サービスを提供でき、僕たちは多くの人にサービスを使ってもらえる。まさに、“三方よし”なんです。このビジネススキームを作れたことが、これまで継続できている要因かなと思っています。

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――今後の展望を教えてください。

山本:「otta」の見守りサービスは福岡市をはじめ、全国17の自治体で利用していただいています。ただ日本の自治体数に対してほんのひと握りなので、全てにサービスを広げたいなと。しかも、僕たちがサービスの提供者ではなくてもいいんです。同じ技術や仕組みを使って、相互接続ができるサービスが他に出てきてもいいのかなと思っています。実際、福岡では九州電力さんが「Qottaby(キューオッタバイ)」、大阪や京都では関西電力さんが「OTTADE!(オッタデ)」という見守りサービスを展開しています。そういったパートナーがどんどん広がり、サービスも浸透していけば日本中のどこでも安心な街がつくれるのではないかと思っています。

ゆくゆくは同じ仕組みを使い、子どもだけでなく高齢者の見守りにも活用できれば。積極的に外に出ることで認知症の進行を抑え、ご家族も安心できる環境を作れるお手伝いができればいいですね。

――これから起業を考えている人にアドバイスを願いします。

山本:机上の空論ではなく、まずはアイディアをカタチにするために実証実験を早めに実行した方がいいと思います。あとは、資本政策はきちんとしておいた方がいいですね。最初、資本のシェアを多めに放出してしまったので、もっと慎重に戦略を練れば良かったなと思っています。福岡はそういったことを相談できる場所がたくさんあるので、活用すればいいのではないでしょうか。

最後に、いろんな人を巻き込むことが大切だと思います。僕は引きこもっていたいタイプなんですが(笑)、積極的に行動しましたね。苦手に感じていることでも、いつかはやらないといけないことは出てくるので。自分が変わっていくことも必要だと思います。

▲ottaはグッドデザイン賞も受賞

インタビューの途中、「会社の利益を上げることではなく、ビジョンの達成を追求しているんです」と話してくれた山本さん。そのために“三方よし”のビジネススキームに辿り着いたという話には興味深いものがありました。子どもたちやお年寄りが安心して暮らせる街をもっと日本中に広げるために、協力してくれるパートナーを募集しているということ。興味のある方は、以下までお問い合わせください。

株式会社ottaについて

■会社概要
会社名:株式会社otta
URL:https://otta.me
所在地:福岡県福岡市中央区天神3-10-1 天神源氏ビル301
設立:2014年10月
代表:山本文和

■事業内容
スマート見守りプラットフォームの開発と運営

■問い合わせ先
Mail:info@otta.me

お知らせ

Fukuoka Growth Nextでは西日本シティ銀行スタッフが毎週水曜日常駐しています。創業に関するご相談も承っていますのでお気軽にお越しください。

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