僕の役割は、息子を応援してあげること

リトルママ森さん

2001年に福岡市で会社を立ち上げ、育児支援メディア「リトル・ママ」を運営してきた森光太郎さん。現在、育児情報誌「リトル・ママ」は月刊40万部を発行し、ウェブへのアクセスは月100万、全国17か所で開催するイベントには15 万人以上が集合。いずれも日本最大級の規模を誇り、ママやパパに愛される有名メディアへと成長しています。19年にわたりメディアを通して育児をサポートしてきた森さんは、1児の父として子育てにも奮闘中。ご自身の生い立ちや子育てについて、率直に語ってくれました。

プロフィール

森 光太郎(もり こうたろう)さん

株式会社リトル・ママ 代表取締役CEO

1972年、福岡市出身。修猷館高校、日本大学を卒業後、ジュエリー会社に勤め、広告デザイン専門学校で学ぶ。福岡に戻り、広告代理店で働いた後、2001年に有限会社イリスを設立(現 株式会社リトル・ママ)。

■公式HP:https://l-ma.co.jp/

 

園で聞いた話にショックを受け、育児メディアをスタート

― 森さんは創業当時、「独身男性が育児支援メディアを始めた」と話題になりました。独身なのに、なぜ子育てを応援しようと思ったのですか?

リトルママの表紙

東京から福岡に戻って広告代理店に入社したところ、たまたま幼稚園に配る子育て系のチラシを手がけたのがきっかけです。当時は28歳、華の独身で(笑)、育児のことなんて何も知らなかったので、幼稚園や保育園を100か所くらい回り、園長先生の話を聞かせてもらいました。

中でも印象に残ったのが「朝ご飯を食べてこない子が多い」「自閉症や多動症、アレルギーの子が増えた」という話。一方、社会では西鉄バスジャックなどキレる子どもや親子の悲惨な事件が絶えず、その裏側が見えた気がしたんです。

― なるほど、仕事を通して、たまたま子どもを取り巻く課題が見えたと。

そうなんです、園を見学させてもらい、先生方の話を聞く中で、子どもや親を応援したいという思いが芽生えました。でも会社とは方針が合わず、勢いでリトル・ママを起業。同じ思いを持つ仲間たちと一つずつ積み上げてきました。

 

メディアの役割は、ママと他の人たちをつなぐこと

― 森さんはどんな家庭で育ったのでしょう?

父が開業医で、僕が中1のとき別居が始まり、20歳で離婚が成立しました。その間は環境が複雑だったこともあり、流さなくていい涙を流してきた方だと思います。だから、人がブチっとキレるかどうかは紙一重という実感もあります。でも、大人になってふと思ったんです。いろいろあったけど、自分が元気に働けるのは両親が生み育ててくれたおかげだと。

― そうでしたか…辛い経験があったからこそ、親子の課題をリアルに感じられたのかもしれません。起業後に結婚されて、お子さんは今おいくつですか?

結婚したのは36歳で、息子は7歳になりました。

― 起業から12年後にお子さんが生まれ、子育てに関する知識はかなりあったと思います。自分の子育てについてイメージはありましたか?

いえ、それが全然なくて、僕は基本的にダメパパですよ(笑)。起業後は日々会社を回すことで精いっぱい。初めは“育児情報誌の編集長”として、独身でも育児の質問に何でも答えなきゃとプレッシャーを感じていたけど、途中からそうじゃないと気付いたんです。

メディアは媒体で、人と人をつなぐことが使命。僕が答えを持っている必要はなくて、質問されたら詳しい人につなぐことができれば良いと考えています。なので、ママと専門家、クライアント、ママ同士をつなぐことに徹しています。

メディアは媒体で、人と人をつなぐことが使命。僕が答えを持っている必要はなくて、質問されたら詳しい人につなぐことができれば良いと考えています。

 

夫婦でフェア感を持てれば、どんなスタイルでもいい

― 子どもができたと分かったときのお気持ちは?

妻が子どもをすごく望んでいたのでホッとしたのと同時に、責任感という大きな重圧がきました。女性はドラマのように「ホント良かったねー」と感動に包まれるリアクションを求めているかもしれないけど、実際は父親になる覚悟、家族を守っていかなければならないという責任感がズシンと乗っかった気がします。

― 出産には立ち合いましたか?

そのつもりでした、今は立ち合いが当たり前という風潮ですし(笑)。だけど、月1日だけ外せない自社の新卒説明会があって、その日にビンゴ。朝、妻を産婦人科に連れて行き、説明会が終わって駆けつけると生まれてました、超安産です。小さくて今にも壊れそうなわが子を見て、ただただ感動しましたね。

― 家庭で夫婦の役割があれば、聞かせてください。

うちは僕が仕事をして、妻が家を守るという昔ながらのスタイル。話し合って決めたんです。夫婦や家族のあり方はどんなスタイルでもアリで、夫婦でフェア感を持てればいいと思っています。

僕は起業したときから24時間仕事モードで突っ走ってきました。会社やスタッフを守りつつ、社会の役に立ちたいので。だから、子どもができたからっていきなり家庭モードというのは正直無理で、世の中のパパほど時間を取れていないと思います。でも、できる限りイベントや週末には家族や子どもとの時間を作っています。

 

子とふたりで1日デート

― どんなスタンスで子育てをされていますか?

妻は教育熱心で、子どもにキッチリさせるタイプ。その分、僕と一緒にいるときは、息子が好きなことをさせています。役割分担でバランスをとっている感じ。もし妻がゆるい人なら、僕が教育パパになっていたかもしれません。

仕事柄、僕は子育てに関して一通りの知識を持っているかもしれないけど、結局は妻が主になり、僕の意見よりママ友やネットの口コミが優先されているかな(笑)。そんな家庭が多い気がするし、それでいいと思っています。

― お子さんとはどう過ごしてますか?

お子さんとはどう過ごしてますか?リトルママ森氏へのインタビュー

息子はまだ1年生になったばかり。平日は朝30分一緒に過ごすだけで、帰宅するともう寝ています。

週末は最近、息子とふたりで出かけることが多いかな。妻に自由な時間を作ってあげたいというのもあって。息子との1日デートは、だいたい映画からカラオケ、ゲームセンターというコースです(笑)。

― 1日デートは楽しそうですね。

普段、息子はゲーム禁止だけど、僕といるときはスマホのゲームをさせてあげます。ただし、パパの手伝いをしたときだけ。例えば、一緒に洗車したり、お墓掃除に付き合わせて、お墓の名前を見ながら「これがおじいちゃん、ひいおじいちゃん、ひいひいおじいちゃんで…」なんて話す時間も楽しい。

ゴールデンウィークに自転車の練習をしたのも面白かったですね。子どもの集中力って30分くらいしか持たないと分かり、様子を見ながら教えていたら日に日にうまくなり、4日で乗れるようになりました。

自転車に乗る練習をする子どもと親

― 教え方が上手なんでしょうね。叱ることは?

叱りますよ、息子はパパの方が怖いんじゃないかな。普段はやかましく言わないけど、態度が悪いときや口のきき方が悪いときとかは、ビシッと叱る。その分、妻が日々の細かいところを注意している気がします。息子は右から左の耳に抜けてますけどね―(笑)。僕としては、子どもに「勉強しなさい」というのではなく、「好きな音楽を聞かせるから2曲以内で終わらせよう!」とか、エンタメ的な要素を加えるようにしています。男の子は単純でいいなあと思いますよ。

子育てが大変と思ったことはありません。

 

チャンスを与えて応援するけど、結局は本人次第

― 普段お子さんによく言う言葉はありますか?

どうかなあ、よく「いい子、いい子」と言うかな。褒めようと心がけています。例えば、息子は習い事や塾があり、1日にやることが決められていて忙しい。「よく頑張ったな」と声をかけたりして、頑張る彼を応援してあげたいと思っています。

― どんな子に育ってほしいですか?

うーん、息子にこうあるべきとか、こうなってほしいという思いはないですね。欲をいえば、ポジティブに自分の力で生きていけるようになってほしいかな。もちろん親として、できるだけチャンスを与えたいけれど、結局は自分次第、自分の力でどう頑張るかだと考えています。

 

「育児・家事をしない男性は悪い」わけではない!

― 森さんは夫婦や子育てを俯瞰して見ている気がします。他のお父さんとの交流はありますか?

パパ友はだいたい経営者ですね。あとは、ご近所の家族とバーベキューをしたりすることはあります。新たな世界が見えて、なかなか面白いですよ。

― 今はイクメンが注目されていますね。

「今はイクメンが注目されていますね」と問われ、回答を考える森氏

ジェネレーションと地域のギャップを感じます。僕らの世代はイクメンという言葉が出始めた年代で、何となく「やんなきゃ」という外圧を感じるけど、今の20代はナチュラルに「それはやるっしょ」みたい空気があります。地域に関しては、東京ではレディファーストがスタンダートで男性の育児や家事の参加率が高い一方、福岡は九州男児的な男性や、「家事や育児は私がやるもの」と思っている女性も多いですね。

「育児・家事をしない男性は悪い!」という世の中の風潮に、僕はちょっと抵抗があります。さっきもお話したように、どんなスタイルでもOKで、いかに夫婦がフェア感を持つかが重要だと思うので。「どっちもいいよね」と受け入れられる社会になってほしい。まあ、夫婦双方がフェア感を持ち続けるのは難しいと実感していますけど(笑)。調整し続けないといけないかもしれませんね。

 

親が自然体でいられるように、社会全体で子育てを

― 19年メディアをされてきて、子育て環境は変わってきたと感じますか?

本質は変わってなくて、子育てを始めたときのママの孤独を和らげるサービスは昔も今も必要だと思います。ママが悩みを打ち明けられるママ友を作る場は、前なら公園だったけど、今はSNSやイベントになってきているかな。そもそもの前提として、社会全体で子育てをしていくことが一番重要で、パパもママも我慢しすぎず、もっとナチュラルでいいんじゃないかなと思います。

― 確かに、もっと肩の力を抜いて子育てができるといいですね。

それに、これからの社会を生きていくためには、国語・算数という勉強よりも、チャレンジ精神とか違うことが大切になってくるんじゃないでしょうか。教育はITによって変えられるし、僕自身は教育とエンタメの間に子どもの気づきがあったりするのかなと思っています。そんな事業にもチャレンジしていきたいです。あ、また仕事の話になっちゃいました。

― 最後に聞かせてください。父親になって7年、子育てを通して森さん自身が変わったなと思うことはありますか?

うーん、そう聞かれると、あんまりないな。ただ、自分が永遠の子どもだってことには気づきました(笑)。

 


長年、育児メディアを運営されてきた森さんの子育ては、意外なことにとても自然体でした。「こうあるべき」という固定観念にとらわれず、パートナーである妻とのバランスを取りながら、楽しく息子さんと向き合う姿勢が素敵だなと思いました。

 

インタビュアープロフィール

佐々木恵美

佐々木恵美

フリーライター・エディター

福岡市出身。九州大学教育学部を卒業、ロンドン・東京・福岡にて、女性誌や新聞、Web、情報誌などの制作に携わる。特にインタビューが好きで、著名人をはじめ数千人を取材。2児の母。

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