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イノベーションとはどんな意味?定義と種類を学び、課題解決や経済成長につなげよう

By 森本由紀

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2021.03.03
イノベーションとはどんな意味?定義と種類を学び、課題解決や経済成長につなげよう

近年は、ニュースや新聞、テレビCMなどで「イノベーション」という言葉を聞く機会が頻繁にあります。日本語では「技術革新」と訳される言葉ですが、意味がよくわからない人も多いのではないでしょうか?本記事ではイノベーションの意味や定義を説明しますので、ビジネスパーソンとして正しい知識を身につけておきましょう。

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イノベーションとは何か?定義をわかりやすく解説

イノベーションとは何か?定義をわかりやすく解説

イノベーションという概念については、世界中で何人もの学者が定義づけを行っています。ここでは、シュンペーターとドラッカーという2人の学者の理論を簡単に説明します。

シュンペーターの「イノベーションの5つのタイプ」

イノベーションという概念を確立したのは、オーストリアの経済学者ヨーゼフ・シュンペーターであると言われています。シュンペーターは、著書「イノベーションを核とした経済発展理論」の中で、イノベーションには次の5つのタイプがあるとしています。

  1. プロダクト・イノベーション(新しい生産物の創出)

  2. プロセス・イノベーション(新しい生産方法の導入)

  3. マーケット・イノベーション(新しい販売先・消費者の開拓)

  4. サプライチェーン・イノベーション(新しい供給源の獲得)

  5. オーガニゼーション・イノベーション(新しい組織の実現)

イノベーションは「技術革新」にとどまらない

日本においては、イノベーションとは主に「技術革新」という意味で捉えられています。しかし、上記の5つを見てもおわかりいただけるように、イノベーションの意味は「技術革新」にとどまりません。

たとえば、商品やサービスの製造工程を変革することも、プロセス・イノベーションと呼ばれるイノベーションです。アパレル業界のSPA(製造小売業)などはプロセス・イノベーションの一例になります。

シュンペーターの分類を参考に、まずはイノベーションが一般的に認識されているよりも広い概念であることを理解しておいてください。

ドラッカーの「イノベーションの7つの要素」

オーストリア生まれの経営学者で、「マネジメントの父」と呼ばれるピーター・ドラッカーも、イノベーションについて述べています。ドラッカーは、イノベーションは7つの要素から生み出されるとしています。

ドラッカーの提唱するイノベーションの7つの要素を成功しやすい順に並べると、次のようになります。

  1. 予想外のもの

  2. ギャップ

  3. ニーズ

  4. 産業構造の変化

  5. 人口構造の変化

  6. 世論の変化

  7. 発明・発見

イノベーションは予想外のものから起こりやすい

ドラッカーは、イノベーションは予想外のものから生み出されることがあり、その場合に最も成功しやすいとしています。たとえば、予期せぬ成功や失敗がイノベーションにつながるという考え方は、理解しやすいのではないでしょうか?

たまたま成功したときや失敗したときには、その結果に一喜一憂するのではなく、新たなビジネスのきっかけにする視点が重要ということです。

発明や発見からはイノベーションを起こしにくい

多くの人はイノベーションという言葉から、発明や発見をイメージするでしょう。しかし、ドラッカーは発明や発見からイノベーションが生まれる可能性は低いことを指摘しています。

新しくて珍しいものを発明しても、それが世の中に求められているものとは限りません。結局は自己満足にすぎないということもあります。つまり、必ずしも発明によってイノベーションを起こせるわけではないのです。

知っておきたいイノベーションの種類

知っておきたいイノベーションの種類

イノベーションについては、何人もの学者によってさまざまな種類分けが行われています。ここでは、世界的に有名な学者が提唱しているイノベーションの種類を紹介します。

クリステンセンによるイノベーションの2つの種類

ハーバード・ビジネススクールの教授であるクレイトン・クリステンセンは、イノベーション研究の第一人者です。著書「イノベーションのジレンマ」で、イノベーションには「持続的イノベーション」と「破壊的イノベーション」の2つがあることを指摘しています。

クリステンセンの分類1:持続的イノベーション

既存市場の価値に沿って改良を重ねることにより、従来と同じ方向性でさらに大きな価値を生み出すのが持続的イノベーションです。言い換えれば、既存顧客が求めるものの性能や機能を向上させることと言えます。

多くの企業が行っているのは持続的イノベーションで、顧客の意見を反映しながら商品やサービスをより良いものへと進化させています。

クリステンセンの分類2:破壊的イノベーション

既存市場で当たり前となっている価値を覆し、新たな価値基準を市場にもたらすイノベーションのことです。既存顧客が求めるものではなく、性能や機能を必ずしも向上させるものでもありません。

破壊的イノベーションの1つとして、「ローエンド型破壊」があります。これは高価かつ複雑な商品が主流となっている市場に、低価格かつシンプルな商品を投入する手法です。

既存市場のローエンド層を獲得でき、改良を繰り返しながらハイエンド層の獲得も狙えます。航空業界におけるLCCや、携帯電話業界における格安SIMなどがローエンド型破壊の例と言えます。

「イノベーションのジレンマ」とは?

クリステンセンは、「イノベーションのジレンマ」についても指摘しています。これは、業界トップの企業が顧客の声に耳を傾けながら自社製品の改良を行っていった結果、顧客が求めている別のニーズに気付くことができず、新興企業に負けてしまう現象を言います。

大企業は継続的な利益確保を重視して持続的イノベーションに偏ってしまいがちですが、これにより「イノベーションのジレンマ」が起こってしまいます。

その一方、従来の技術やサービスにとらわれない新興企業は破壊的イノベーションを起こすことができ、あっという間にシェアを獲得できるのです。

ヘンダーソンやクラークによる理論

マサチューセッツ工科大学のレベッカ・ヘンダーソン教授と、ハーバード大学のキム・クラーク教授が1990年(平成2年)に発表した論文でも、イノベーションに関して新しい理論が提唱されています。

ヘンダーソン=クラーク論文では、組織の知識を「コンポーネントな知」「アーキテクチュラルな知」という種類に分けています。

コンポーネントな知(部品の知識)

製品・サービス開発における特定部分の設計デザインに関する知識

アーキテクチュラルな知(構造的知識)

部品を組み合わせて一つの最終製品にするための知識

そして、これらの知の組み合わせによって、イノベーションが次のような種類に分けられるとしています。

急進的イノベーション

部品の知識、構造的知識を両方破壊するイノベーションで、革新的な新製品を市場に投入する手法です。市場を根本的に変える特徴があり、パソコンやインターネットは急進的イノベーションの代表的な例と言えます。

漸進的イノベーション

部品の知識、構造的知識を両方強化するイノベーションで、既存の技術を改良するものです。製品の機能の多くは維持したまま、従来の製品よりも優れたものに変える手法になります。

アーキテクチュラルイノベーション

部品の知識は強化し、構造的知識を破壊するイノベーションです。部品の機能はそのままに、部品の組み合わせを変える手法になります。

モジュラーイノベーション

部品の知識は破壊し、構造的知識を強化するイノベーションです。部品の組み合わせはそのままで、部品自体の機能を向上させる手法になります。

ヘンリー・チェスブロウによる2種類のイノベーション

ハーバード大学のヘンリー・チェスブロウ教授は、イノベーションを「クローズドイノベーション」と「オープンイノベーション」の2つに分けて説明しています。

クローズドイノベーション

自社の技術やノウハウといった自前の経営資源だけで行うイノベーションを意味します。

オープンイノベーション

自社の技術やノウハウのみならず、他社や他の組織などの外部資源を組み合わせることにより起こすイノベーションを言います。

「リバースイノベーション」とはどういう意味?

アメリカのダートマス大学のビジャイ・ゴビンダラジャン教授ら複数の学者によって提唱されているのが、「リバースイノベーション」です。新興国や途上国のニーズを受けて開発された製品、技術、アイデアなどを先進国に導入することにより、世界に普及させる形のイノベーションを意味します。

先進国の製品・技術をマイナーチェンジして新興国に投入する従来の方式とは逆のアプローチとして世界中で注目されています。

企業におけるイノベーションの必要性とは?

企業におけるイノベーションの必要性とは?

イノベーションの意味は、「技術革新」にとどまらないと説明しました。既存の製品や技術、システムなどに新しい発想を取り入れること全般がイノベーションになります。

特に企業においては、このようなイノベーションの必要性が高くなります。企業でイノベーションを実践することで、何が起きるかを考えてみましょう。

経済成長を支える原動力となる

経済の成長のために、従来の非効率的な方法を改め、より効率的な方法を発見することは重要です。イノベーションは、経済成長のために欠かせないものと言えるでしょう。そして、経済成長を支えるのが企業の役割です。企業においてイノベーションを起こすことで、経済の発展に寄与することになります。

企業の存続のために有効である

企業は安定的な収益を得ながら事業を展開し、存続していく必要があります。イノベーションを起こすことができれば、競争の中で生き残ることができます。企業の存続のためには、イノベーションに取り組むことが欠かせません。

人手不足に対応できる

企業においては、少子高齢化に伴う労働人口の減少に向けての対策が必要です。生産性の向上を意識しなければ、人手不足に陥ったときに困ることになります。イノベーションを実践することにより、労働者一人あたりの生産性を高めることが可能になるでしょう。

企業の課題を解決できる

イノベーションは、企業が抱える課題の解決につながります。企業が抱える問題は、論理的な思考力だけでは解決できないことがあります。イノベーションを起こせば、これまでと全く違った角度から課題にアプローチでき、課題解決のための手がかりを掴めるでしょう。

イノベーションの学びが深まるおすすめ本4選│
ビジネスパーソンが読んでおきたい書籍とは?

イノベーションの学びが深まるおすすめ本4選│ビジネスパーソンが読んでおきたい書籍とは?

イノベーションに関する本のうち、ビジネスパーソンによく読まれているものを4冊ピックアップしました。イノベーションを起こす力を身につけ、ビジネス戦略として取り入れるために役立ててください。

「イノベーションのジレンマ(増補改訂版)」クレイトン・クリステンセン著

大企業が持続的イノベーションに注力することにより、破壊的イノベーションを起こす新興企業に負けてしまう「イノベーションのジレンマ」について解説した本です。経営者においては、論理的に正しい経営判断を行うだけでなく、破壊的イノベーションに対応する力を身につける必要があることが説明されています。

「リバース・イノベーション」ビジャイ・ゴビンダラジャン、クリス・トリンブル他著

新興国において開発した製品・技術を先進国に導入する形のリバース・イノベーションに関し、豊富な事例をもとに解説した本です。イノベーションを起こすのは先進国に限らないことを理解し、新興国市場を攻略することの重要性を認識するために役立ちます。

「マンガと図解でわかる クリステンセン教授に学ぶ「イノベーション」の授業」イノウ著

イノベーションに関して、マンガと図解でわかりやすく説明した本です。この本を読めば、クレイトン・クリステンセン教授の「イノベーションのジレンマ」「イノベーションへの解」「イノベーションへの解 実践編」の3冊について、エッセンスを理解できます。

「イノベーションと企業家精神【エッセンシャル版】」P.F.ドラッカー著

誰もがイノベーションを学んで実践できるよう体系化した本です。イノベーションを起こしたいという意欲を持つビジネスパーソンに、ぜひ読んでいただきたい一冊です。

まとめ

イノベーションの意味について理解していただけたでしょうか?企業がこれからの時代を生き抜くために、イノベーションの視点は欠かせません。会社の成長と日本経済の発展のために、イノベーションを起こし続ける力を身につけておくと良いでしょう。

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