福岡市からユニコーン企業の輩出を目指す。福岡市がスタートアップ支援に力を入れる理由 | 福岡市役所 清見康平さん

寺尾えりか

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2021年2月10日 (水)
福岡市からユニコーン企業の輩出を目指す。福岡市がスタートアップ支援に力を入れる理由 | 福岡市役所 清見康平さん

"経営者は孤独"と言われますが、特にスタートアップ企業の場合は、一人や少人数体制のため、起業前や立ち上げ期には悩みも多いものです。そんな方々のサポートをしようと、福岡市では行政をはじめ、民間と連携したスタートアップ支援の土壌を整えています。
そこで本特集では、どのような支援者がいるのか、支援する側の想いを掲載することで起業を志す方へ安心をお届けします。

2012年に「スタートアップ都市ふくおか宣言」を行って以来、全国トップクラスの開業率を維持し続け、スタートアップシティとしてますます盛り上がりを見せている福岡市。相談窓口によるサポートはもちろん、資金や実証実験などの支援、さらには民間企業によるスタートアップとの共創など、これまでの支援の枠にとらわれないかたちを模索し続けている。福岡市はなぜそこまでスタートアップ支援に力を入れているのか。その理由について、福岡市 経済観光文化局 創業支援課に所属しながらスタートアップの支援を行っている、清見康平さんにお話をうかがいました。

清美さん

■プロフィール
福岡市経済観光文化局創業支援課創業支援係長
1983年生まれ、福岡県福津市出身。

民間企業で10年間の勤務経験を経て、2016年に福岡市役所に入庁。2019年より創業支援課に在籍。現在は官民共働型のスタートアップ支援施設Fukuoka Growth Nextや、起業相談窓口のスタートアップカフェ等を担当。

まずは相談のしやすい環境を

――まずは創業支援課の事業内容についてお聞かせください。

清見:創業支援課という名前のとおり、起業を考えている方や起業したばかりという方、そういった方々を支援する政策を考えたり、起業してからの事業成長のサポートをしたりしています。官民共働型のスタートアップ支援施設であるFukuoka Growth Next(以下、「FGN」)や、起業に関するあらゆる相談に応じるスタートアップカフェの運営も行っています。

――創業支援課の窓口では、どういった相談ごとを受け付けられているんでしょうか?

清見:創業支援課は市役所の窓口なので、「起業に向けてこういうことを考えているんだけど、どういう支援を受けられるのか、紹介してもらえないか」といったように、制度に関する相談が多いです。起業相談を市役所でというのは敷居も高いですので、おしゃれな雰囲気で、気軽に相談いただけるように、福岡市ではスタートアップカフェで様々な起業相談を受け付けるようにしています。「まだビジネスプランもない」「どこから手をつけたらいいのかわからない」などといった方でも、専門のコンシェルジュが無料で相談に応じています。

前例のない支援のかたちを模索

――創業支援にはどういったサポートを受けられるのでしょうか?

清見:あらゆるステージに応じた支援機能を、このFGNに集約しています。創業前や初期の段階では、スタートアップカフェで開業手続きや事業計画に関するご相談を受け付けており、その次の段階では、インキュベーション機能も持つFGNにおいて、ビジネスマッチングや資金調達など、民間事業者さんと一緒に支援プログラムを展開しています。さらに、グローバルに展開していきたいという方には、カフェ内のグローバルスタートアップセンターで、福岡市がMOU*を締結している11カ国・15拠点のネットワークを活用して、その国・地域のマーケットの情報収集や支援制度、進出時のビジネス展開に関する相談を、福岡市にいながら受けることができます。

*MOU…行政機関等の組織間における合意事項を書面化したもの

――『スタートアップカフェ』のような取り組みは、全国的に見てもかなり珍しいものですよね。

清見:そうなんです。実は福岡市が全国に先駆けてスタートし、モデルケースとなって、現在は大阪や岡山、沖縄に広がっています。

――実際にそういった施設を利用された方たちからの支援メニューに対する反応はいかがですか?

清見:スタートアップカフェだけでいうと、開業してからの相談件数が12,000件を超えました。また、その中から実際に起業したのが300件ほど。しっかりと実績にもつながっていることからもわかるように、相談者のみなさまからも非常にいい評価を得ています。FGNも、支援プログラムはもちろん、起業家や支援者が集まる場としての魅力が評価され、入居申し込みも耐えないような状況です。

スタートアップカフェ

――『FGN』に入居するとどんなメリットがあるのでしょうか?

清見:入居するには審査が必要なのですが、アントレプレナーやエンジニアなど向けの各種成長支援プログラムのほか、先輩起業家やVC等と一対一でメンタリングを受講できるなど、スタートアップの成長を支援するプログラムを受講することができます。何よりも、多くの起業家や支援者など、さまざまなバックグラウンドの方々と出会うことができ、横のつながりが生まれやすいというメリットがあります。

地方からロールモデルをつくる

――福岡市はなぜそこまでスタートアップ支援に力を入れるのでしょうか?

清見:福岡市には一級河川がないんです。つまり、工場を建設するには不向きな環境なので工業都市にはなり得ません。また、福岡に本社を構える大企業が少なく、その支店がほとんど。いわゆる"支店経済都市"と呼ばれる街なんです。そうすると、リーマンショックのようなことが再び起こった時に、支社がどんどん撤退し、福岡市の経済が衰退していってしまいます。だからやっぱり、福岡市に本社を構える世界的な企業が必要だということで、長期的な成長戦略の中でスタートアップ支援を行っています。そうした企業が増えると、もちろん雇用の創出にも繋がりますしね。

福岡市

――福岡市は官民が一体となって、スタートアップ事業にも取り組まれている印象が強いですよね。

清見:そうですね。行政としても大変ありがたいです。他県の自治体の方たちが視察にこられた際にも、そういった声をいただくことが多いです。福岡市はリーダーが市の進むべき方向性を明確に示していることから、民間の事業者さんも応じやすいのではと思います。

行政が突っ走って支援政策を講じたとしても、現場である民間のコミュニティが置いてけぼりになってしまうと、支援として成り立ちません。だから私たちは、施策検討の際には、現場の意見をしっかりとくみ取り、それに即した支援ができているかどうかを常に意識しています。

チャレンジできる街・福岡市

――福岡市で企業するメリットについて教えていただけますでしょうか。

清見:2020年の9月から「福岡市新規創業促進補助金」という新たな支援事業をスタートしました。国の特定創業支援等事業を利用して、会社設立時に必要となる登録免許税の半額減免を受けた人に対し、残りの半額相当額を補助することで、創業者の負担を実質ゼロ円にするという内容です。

さらに、福岡市新規創業促進補助金に呼応するように、たくさんの会社さんから「それならうちもその補助金を活用して起業される方たちを支援するために、何か特典を提供したい」というお話をいただいて。例えば、株式会社ヌーラボさんのプロジェクト管理ツール「Backlog」を1年間99% OFFで使うことができたり、GMOペパボ株式会社さんのネットショップ作成サービス「カラーミーショップ」の利用料が1年間無料になったり…。福岡市新規創業促進補助金に加えて、さまざまな特典も利用できるようになりました。こういった時に名乗り出てくれる民間企業がいるということが、官民一体となって支援に取り組んでいる"福岡市らしさ"のひとつの現れなのかもしれません。

――福岡市で起業家が増えると街にどのような影響があるのでしょうか?

清見:目指しているのは「福岡流のエコシステムの確立」です。起業される方たちをサポートし、それを通じて事業を成長させた方が次世代を支援する側に回るというサイクルを回していくことで、起業家が次々と生み出され、ゆくゆくはその中からユニコーン企業が誕生する循環システムのことをいいます。こういった流れが当たり前のようにあると、刺激・イノベーションを求めて内外から多くの企業や人が集まるようになるといったように、街にさらなる活気をもたらすと思います。

――創業支援としての今後の展望は何かありますか?

清見:やはり、ユニコーン企業を始めとした、世界を変えるようなスタートアップをしっかり生み出し、増やしていくことですね。

――今後起業を検討されている方にアドバイスがあればお願いいたします。

清見:福岡市が目指すのは"チャレンジする人が尊敬される街"になること。起業っていうのはどうしてもリスクが伴うもの。それでもチャレンジするということは"世の中を変えてやろう"という熱意を持っているはずなんです。だからこそ、福岡市も全力でサポートさせていただきます。

コロナ禍において起業の相談件数は減っているのかと思いきや、前年に比べて7割ほど増えているのだという。環境の変化に対応し、いちはやくオンライン相談を受け付けるなど、常に民間のコミュニティの声に耳を傾けている福岡市だからこその結果だといえる。土壌は整いはじめている。あとはユニコーン企業が誕生すれば福岡市が目指す「福岡流エコシステム」がうまくまわりはじめるはずだ。

福岡市 経済観光文化局 創業支援課

お知らせ

▷Fukuoka Growth Nextでは西日本シティ銀行スタッフが毎週水曜日常駐しています。創業に関するご相談も承っていますのでお気軽にお越しください。

▷福岡市と北九州市には創業期のお客さまをサポートする専門拠点『NCB創業応援サロン』を設置していますので、こちらにもお気軽にお越しください。
https://www.ncbank.co.jp/hojin/sogyo/sogyo_plaza/

[NCB創業応援サロン福岡]
福岡市中央区天神2-5-28 大名支店ビル7階
平日:9:00~17:00
TEL:0120-713-817
[NCB創業応援サロン北九州]
北九州市小倉北区鍛冶町1-5-1 西日本FH北九州ビル5階
平日:9:00~17:00
TEL:0120-055-817