官民一体となった支援がいい循環を生む。スタートアップを輩出し続ける「FGN」の取り組み | FGN事務局長 内田雄一郎さん

寺尾えりか

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2021年2月8日 (月)
官民一体となった支援がいい循環を生む。スタートアップを輩出し続ける「FGN」の取り組み | FGN事務局長 内田雄一郎さん

"経営者は孤独"と言われますが、特にスタートアップ企業の場合は、一人や少人数体制のため、起業前や立ち上げ期には悩みも多いものです。
そんな方々のサポートをしようと、福岡市では行政をはじめ、民間と連携したスタートアップ支援の土壌を整えています。
そこで本特集では、どのような支援者がいるのか、支援する側の想いを掲載することで起業を志す方へ安心をお届けします。

全国的に見ても、もっとも勢いのある街のひとつとして評価されている福岡市。人口、税収は増加の一途をたどり、2020年5月には、予測よりも8年早く政令指定都市で5番目となる人口160万人を突破するなど、その勢いはとどまることを知らない。その"勢い"を後押ししているもののひとつとして挙げられるのが、官民一体となったスタートアップ支援だ。今回は、その拠点となっている「Fukuoka Growth Next(以下、FGN)」の事務局長を務める内田雄一郎さんに取材を行った。なぜ福岡は、全国からうらやましがられる"スタートアップ支援の街"になったのか。オープンして3年が経とうとしている今でも、FGNが注目され続けるのはどうしてなのか。その理由にせまる。

fgn内田さん

■プロフィール
FGN 事務局長(福岡地所株式会社所属)
内田雄一郎(うちだゆういちろう)さん

1976年福岡市生まれ。大学卒業後、コカ・コーラウエスト株式会社に入社し渉外秘書に従事したのち、2015年に福岡地所に入社。オフィスビル運用等を経てFGNの立ち上げに参画。2017年より開発事業部でFGNの運営を担当。現在は事業創造部の課長としてFGNの事務局長を務める。

地元企業を巻き込んだ支援のかたち

――まずは「FGN」のコンセプトを教えていただけますでしょうか?

内田:ここは全国でもまれにみる官民共同運営のスタートアップ支援施設です。平たくいうと、スタートアップ企業に向けたコワーキングスペースなのですが、営利目的の施設が多いのに対して、ここは入居者の支出を最小限に抑え最短距離で成長してもらうというコンセプトを掲げています。FGN開業から5年後には、企業価値が10億円ほどの会社を福岡市全体で100社程生み出すのが当面の目標です。

fgn

――実際の入居者数はどれくらいでしょうか?

内田:昨年末の段階で130社くらいは契約させていただいています。それに加え、スポンサー企業が28社、更に支援者を含めると170社くらいの方がFGNと関係をもたれている状況になります。

――福岡市全体が一丸となってスタートアップ支援に取り組んでいるのがその数字からもわかりますね。

内田:第1期のFGNでは、さくらインターネットさんとアパマンショップホールディングスさんで組織を構築しましたが、この第2期ではGMOペパボさんにもお声がけさせてもらい、エンジニアスクールなどの強化を図っています。各社から責任感の強い担当者を出して頂くことで、入居者への伴奏型支援が充実していると思います。また、高島市長がプロジェクトの先頭を走ってくださり、その想いに各社が賛同してくれたことも、名だたる企業が集まった要因のひとつだと思います。

fgn集合写真

――そういった背景があるからこそ人が集まるということですね。

内田:そうですね。また、FGNには起業に関する相談や準備を行う「スタートアップカフェ」が併設されているのも強みの一つです。毎日のようにアイデアを持った方々が相談に来て、そこから法人を立ち上げたり、事業計画を組み立てていきます。そして成長して行く過程で、新たな雇用が生まれ資金調達を実行し、FGNを卒業していきます。また、市場に出ていくと、様々な問題に直面しますので、その際はFDC(福岡地域戦略推進協議会)さんの力もお借りし、行政機関などに働きかけてもらうことで、スタートアップは一気に成長を遂げることができます。ここFGNの周辺には、起業初期から市場に出た後まで、一貫した支援体制が構築されており、そういった施設は全国的にも福岡にしかないと言われています。この様な体制を作ろうとした福岡市に先見の明があったのだと思います。

新たな取り組み"スポンサー制度"

――スポンサー制度を導入されたのはいつからですか?

内田:第2期からスタートしました。目的は、インフラ企業・ゼネコンや銀行といった地域を支える企業に、FGNに入居するスタートアップ企業が接触するための機会やコネクターが必要だと考えました。企業側もお金というかたちで支援しているので、本気でコミュニケーションを取りはじめましたし、成果を追い求めてくれています。はじめは、実証実験的に始めた制度でしたが非常に良い成果が見え始めています。

――具体的にどういう成果ですか?

内田:事務局が定期的に入居者をメンタリングし「ヒト」「モノ」「カネ」の何に困っているのかを聞いて、我々が持っているコネクションや情報を提供しています。一方で、スポンサー企業からは興味のある分野や事業を随時ヒアリングしているので、精度の高いマッチングを実現できていると思います。FGNは、オープンイノベーションのプラットフォームとして機能してきたという実感があります。
(以下はオープンイノベーションの一例)

オープンイノベーション一例

――FGNならではの支援策を教えていただけますか。

内田:起業家育成のためのインキュベーションプログラムを展開しています。この他、エンジニアの育成や、PR・広報という分野でも支援プログラムを整えています。事業計画の立て方や経営理念の立て方、財務戦略など、家庭教師の様に教えるプログラムは、シード期のスタートアップから多くの申込を頂いています。
また、他社のアクセラレーションプログラムもFGN内で開催されています。デジタルガレージさん、西日本鉄道さん、凸版印刷さんなど、外部企業と協力して、アクセラレータープログラムを実行し、オープンイノベーションを加速させています。

――起業される方にとっては、とても心強いですよね。

内田:そうですね。例えば県外から販路を何も持たず来られたスタートアップでも、民間企業には我々FGNがサポートし、行政機関との調整には福岡市さんが間に立ってくれます。色々と伴走してくれる環境があるという点は他都市にはない強みだと思います。
また、東京のベンチャーキャピタルやエンジェル投資家さんが2週間に1度のペースでメンタリングに来て頂けますので、資金調達面に関するサポートも充実しています。

福岡市にスタートアップが集まる理由

――全国的にみて福岡市はスタートアップが盛り上がっていると思うのですが、いかがでしょう。

内田:全国的に見ると東京の渋谷区は、スタートアップの実証実験を積極的に取り組む行政という評判から、スタートアップが集積しているようですが、福岡市も独自で実証実験プログラムを実行するなど、新しいことにチャレンジしやすいという土壌であると思います。
また、他の創業支援施設は、施設の収益化を優先して入居者から高い費用をとるモデルが多いのですが、FGNは福岡市が旧大名小学校校舎を無償で運営事業者に提供し、管理を福岡地所が中心になって行っています。そのため、起業したてのスタートアップの費用負担が最小限に抑えられています。目先の収益に固執するのではなく、行政が一歩引いて中長期的にサポートし収益化するという計画が素晴らしい企画だと思います。結果的に優秀な起業家が多く育ち、福岡市はスタートアップが活発という情報が全国的に広まりましたし、そういった福岡市の想いに企業が賛同して、貴重なリソースを喜んで割いてくれているという良い循環が注目されているのだと思います。

――卒業された企業で、特に注目しているところを教えていただけますか。

内田:どの企業も素敵なのですが、直近卒業された企業でいうとオーセンティックジャパンさんですね。登山時に万が一遭難した際、すぐに発見できるようビーコン端末をレンタルするという事業です。登山ユーザーは年々増えている一方で安全対策が問題視されており、これからもっと成長する市場だと思います。

fgn内田さん

――では最後に、FGNとしての展望を教えてください。

内田:スタートアップという言葉が5年、10年後に残っているかはわからないですが、FGNのような場所を必要として入居してくれる起業家はいまだに増え続けています。これから経済不況が予想されますが、その時その時で課題が変わりますので、協力会社さんの力をお借りしながら瞬時に期待に応えられるよう活動を継続していく、それだけですね。福岡の未来のために、新しい風を起こし続けたいと思います。

スポンサー制度などを導入することにより、スタートアップのみならず、地元企業にも新たな風を吹き込んでいる「FGN」。そういった輪が広がっていくことが、都市としての成長にもつながっていることはいうまでもない。このいい循環がこれからも続いていけば、FGNからユニコーン企業が輩出される日も、そう遠くはないのかもしれない。

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