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日本人の貯蓄好きは本当なの?投資に対するイメージの違いを海外と比較

一般的に「日本人は貯蓄好きでアメリカ人は投資好き」と言われています。iDeCo(個人型確定拠出年金)やNISA(少額非課税制度)など、個人が投資をする機会が増えた現在でも、日本人が預貯金を好む傾向は変わらないのでしょうか。

この記事では、日本と海外の投資に対する考え方の違いや、海外から学ぶべき点について解説します。

何が違う?日本と海外における資産形成の考え方

最初に、日本と海外で資産形成の考え方が異なる背景について見ていきます。

日本人と外国人のお金に対する意識の違い

日本人が投資を敬遠し、貯蓄を好む理由の一つに「お金は不浄のもの」「子どもの前でお金の話をすべきではない」というような道徳観があると言われています。また、「お金は働いて得るもの」という考えから、「お金がお金を生む」投資を否定的に見る考え方も根強いと言えます。

こうした日本人のお金に対する価値観は、海外では理解しがたいものです。海外ではお金は生活に必要なツールに過ぎず、有意義に使いこなすことが重要と考えられています。

各国の金融経済教育はどうなっている?

このような、日本人と外国人の間のお金に対する意識の違いの根底には、国ごとの金融経済教育が関わっています。

日本においては金融庁や関連する各業界団体から文部科学省に対し、金融経済教育についての提言がされていますが、まだ実現の途上にあります。

一方、海外では資産形成を促す金融経済教育の取り組みが行われています。ここでは、金融教育の先進国とされる米国、英国とオーストラリアの例を紹介します。

米国

米国における金融経済教育は政府の注力の度合いが高いだけでなく、民間を巻き込んだ連携も進んでいます。学校においては、州ごとに学年での個人金融教育の学習基準が設定されています。

英国

英国では国の主導に基づき、すべての年代で「金融ケイパビリティ(金融能力)教育」が段階的に行われています。教科としての金融教育はありませんが、公民や数学などの必修項目の中に金融経済が含まれています。

オーストラリア

オーストラリアでは金融経済教育を国家戦略と捉え、学年ごとの段階的なカリキュラム「経済とビジネス」を実施しています。投資についてはパーソナルファイナンスの章で、リスクや分散投資など実践的な内容を学びます。

アメリカ人は老後資金を自助努力で準備する必要があった

金融教育の違いの他に、日本と米国の社会インフラの違いも資産形成の考え方に影響があると考えられます。

たとえば、日本の会社員・公務員には国民年金・厚生年金という「2階建て」の公的年金制度があります。これに対し、米国にはソーシャルセキュリティという日本の国民年金にあたる制度はありますが、厚生年金のような上乗せ制度はありません。

そのため、アメリカ人は自助努力によって老後資金を準備する必要があり、401KやIRAという日本の企業型確定拠出年金やiDeCoのような制度を活用して投資をしています。

日米の金融資産の割合

では、日本と外国のお金に対する意識の違いを金融資産の割合で確認してみましょう。

日米欧の現金・預金比率の違い

以下の表は日米欧の家計金融資産のポートフォリオを表したものです。

現金・預金

株式・投資信託

債券・保険

日本

54.2%

13.0%

29.8%

米国

13.7%

44.8%

38.6%

欧州

34.9%

25.9%

37.1%

出典:日本銀行2020年(令和2年)「資金循環の日米欧比較/家計の金融資産構成」より作成

株式・投資信託の割合を日本と比較すると、米国は約3.4倍、欧州は約2倍です。このことから、欧米では日本より投資が浸透していることがわかります。

金融資産額に差がついた日本と米国

金融庁の「人生100年時代における資産形成」2019年(平成31年)によると、米国の個人の金融資産額は1998年(平成10年)の404万円から2016年(平成28年)には3399万円と、18年間で約8倍に増えました。これに対し、日本では1994年(平成6年)の402万円から2014年(平成26年)には924万円と、20年間で2倍強の増加に止まっています。

この差は、米国が株式・投資信託で運用し米国株式が上昇したこと、預貯金の割合の高い日本では効果的な資産形成がしづらいことを示しています。

お手本にしたい米国の資産運用とは

公的年金制度への不安、長引く超低金利などから、日本においても効果的な資産形成の必要性は増しています。そのためには、米国にどのようなことを学べばいいのでしょうか。

ダブルインカムという考え方

アメリカ人には、「ダブルインカム」という考え方が浸透しています。ここでいう「ダブルインカム」とは「夫婦共働き」のことではなく、働いて得る収入の他に投資の運用益によってゆとりある生活を目指そうという考え方です。

自分以外にお金にも働いてもらうことにより、自分が働けなくなっても不労所得を得ることができます。また、リタイア後も運用で資産を増やしながら取り崩すことにより、資産の寿命を延ばす効果もあります。

IRAや401Kでコツコツ資産形成

アメリカ人が「投資で資産形成に成功した」というと、ハイリスクハイリターンな取引をイメージする人もいるかもしれません。しかし、米国で投資が拡大した背景には、先述したIRAや401Kといった私的年金制度を活用してコツコツ積み立てていく人が増えたことが挙げられます。IRAも401Kも、税制優遇を受けながら積立投資ができる制度です。

積立で運用商品の価格変動リスクを軽減し、米国株式の上昇の波にうまく乗れたことが資産を大きく増やすことにつながったのです。

iDeCo(個人型確定拠出年金)やつみたてNISAを活用

日本にもiDeCoやつみたてNISAのように、税制優遇を受けながら資産形成できる制度があります。どちらも少額から始められるため、投資のリスクに慣れてから徐々に金額を増やすこともできます。

どちらの制度も、投資信託を活用して少額でも全世界の株式や債券への分散投資が可能です。

iDeCo

iDeCoは加入者個人が掛金を拠出し、金融機関ごとに用意された金融商品で自ら運用し、60歳以降に積み立てた年金原資を受け取る私的年金制度です。iDeCoには次のような3つの税制メリットがあります。

● 掛金は全額所得控除の対象になる

● 運用益に税金がかからない

● 受け取り時は、年金で受け取る場合は公的年金控除、一括で受け取る場合は退職所得控除の対象になる

iDeCoには定期預金や保険のような元本確保型の運用商品もありますが、それだけでは資産を増やすのは難しいため、投資信託も活用するといいでしょう。

つみたてNISA

つみたてNISAは2018年(平成30年)から始まった少額非課税制度の一種で、積立に特化しています。専用口座を作ると、年間40万円までの非課税枠が最長20年間使えるようになります。

つみたてNISAで運用する金融商品は、金融庁が厳選した長期の資産形成に適した約170本の投資信託です。商品選びに迷うことの多い初心者でも始めやすい仕組みと言えます。

まとめ

米国では「日本のような2階建の年金制度がない」「金融経済教育で個人が投資の方法を身に付けている」などのことから、投資が広く普及しています。アメリカ人がIRAや401Kといった税制優遇制度を利用していることを手本に、日本でもiDeCoやつみたてNISAを上手に活用して資産形成をしていくといいでしょう。

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